【技術最前線】鋼管桟橋『SqCピア工法』で世界を駆(架)ける! 挑戦し続ける高知丸高 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【技術最前線】鋼管桟橋『SqCピア工法』で世界を駆(架)ける! 挑戦し続ける高知丸高

鋼管桟橋『SqCピア工法』は国内200橋の施工実績を誇る

 特殊基礎工事会社の高知丸高(高知市)が、海外にも活躍の場を広げている。上部工を先行架設し、下部工を施工する鋼管桟橋『SqCピア工法』は国内200橋もの施工実績を誇るが、断崖絶壁でも対応できる柔軟な施工性が評価され、海外からも引き合いが増えてきた。高野広茂会長は「どんなに難工事でも、最後までやり抜く姿勢が、わが社の技術を支えている」と力を込める。 パキスタンのバロチスタン州とパンジャブ州を結ぶ国道70号線は生産物や農作物の輸送路として使われているが、山岳区間は岩盤が露出し、道幅が狭く、しかも急峻でカーブも多い。ODA(政府開発援助)案件として改修工事がスタートし、断崖絶壁を通る長さ380mの難工事区間にはSqCピア工法の採用が決まった。橋脚は最長部分で36mに達し、合計で186本もの鋼管が使われる。2年間かけて現地に運ぶ計画で、ことし5月には高知新港から第1便の輸送船が出航した。

パキスタンに向け、高知新港から第1便の部材輸送船が5月に出航

 海外での採用はミャンマー、アフリカ、ウガンダに続く4件目。先行する上部工から精度よく鋼管打設を実現する技術が、ビットに打撃モーションを与えながら掘削するダウンザホールハンマー工法だ。高野会長は「悪条件でも岩盤を打ち抜く技術力があるからこそ、SqCピア工法を実現できる。これからも強みの基礎技術を磨き、世界にアピールしていく」と先を見据える。
 SqCピア工法を初適用したのは14年ほど前にさかのぼる。空港大橋右岸側下部工事(広島県三原市)に初採用され、庄川橋梁下部工事(富山県利賀村)では高さ60mを実現するなど地道に実績を積み上げてきた。打撃と回転数を高めるための改良を重ね、現在は鋼管径1500mmも打ち込めるまでに施工精度を引き上げている。
 同社が保有する施工機械は高野会長自らが海外に出向いて購入し、現場に合った仕様にブラッシュアップしている。売上高40億円規模の同社だが、年間の施工機械投資は6億-7億円規模にもおよぶ。「これはと思う機械があれば、迷わず購入している」。機械購入に合わせ、海外メーカーと技術提携を結ぶケースも少なくない。
 現在の海外売上比率は5%程度にとどまるが、高野会長は「国内マーケットが今後縮小することは明らか。いずれは売り上げの5割ぐらいまで引き上げたい」と明かす。将来を見越し、既に中国人研修生17人を受け入れており、2017年度にはネパール人の留学生2人も迎え入れる予定だ。「常に10年先を見ながら経営をしている。より人材をグローバル化していきたい。海外へむやみに人を送り込んでも成功はしない。送り出す技術者は最小限にとどめ、現地の作業員を使い、技術力を育てるつもりで取り組んでいる」

出荷準備を行う南国重機工場

 同社は、常に挑戦しながら技術力を高めてきた。1万5000坪もの広大な敷地に立地する南国重機工場(高知県南国市)は、工場機能とともに資材や機材の置き場も兼ねており、緊急時にすぐ出荷できる体制を確保している。いわば「ここはあらゆる実験を行い、新たな技術を世に出す前線基地」と胸を張る。
 1スパン30mの仮設橋を3日間で架ける緊急用桟橋の新工法は実証実験を終え、これから営業を本格化させるほか、洋上風力発電をターゲットにした4000mmの大口径鋼管の打設技術も既に仕上がっているという。高野会長は「成功や失敗にはこだわらず、最後までやり抜くことが何よりも大切だ。やり通すことが相手への信頼にもつながる」と確信している。

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