◇急所施設の耐震化に遅れ 国が支援
A 約14万戸で断水が生じた能登半島地震を踏まえ、全国で実施された上下水道施設耐震化状況緊急点検の結果が明らかになった。
B 取水施設、導水管、下水処理場、ポンプ場など、上下水道システム全体の機能を維持する上で最重要な“急所施設”の耐震化率は大半が5割を切る低水準だった。避難所などの重要施設に接続する管路の耐震化率も水道、下水道ともに低い。
C 2023年度までは水道が厚生労働省、下水道が国土交通省と所管官庁が分かれていたため、それぞれの基幹施設の耐震化状況把握にとどまっていた。24年度から国交省が水道整備・管理行政を引き継いだことで、上下水道システムから見た急所施設などの耐震化状況を初めて一体的に確認できた。
A どうして上下水道施設の耐震化が遅れているの。
C 国交省は地方自治体の予算や技術職員不足を要因に挙げる。道路や河川などのインフラ維持管理と同じ状況だ。
D このため同省は全自治体に25年1月末までの上下水道耐震化計画策定を要請した。併せて、計画に基づく取り組みを財政と技術の両面で支援し、計画的・集中的に進める方針だ。
B 斉藤鉄夫国土交通相は、自治体任せにしないで「予算が足りないところは財政的に支援し、技術職員がいないところにも地方整備局などを通じて技術的な支援をする」と力を込めた。さらに、政府が11月中にも策定する経済対策に支援策を盛り込む方向で調整する考えを示した。
D 上下水道は国民の生命や生活に直結する重要インフラであることが能登半島地震で再認識された。人口減少で料金収入減は避けられないという難問はあるけど、投資は拡大してほしいね。
◇技能労働者の処遇改善に期待
A 話が変わるけど、型枠工事で生産性向上の取り組みが進んでいる。
E 北九州市のイワイ工業はNC(数値制御)機械を導入した。CADデータを取り込むことで施工図から加工帳を作成し、合板の切断や型枠の幅を決める「セパレータ」の穴開けなどの一連の加工作業を自動で行う機械で、従来の方法と比べて約6割の省力化を見込む。
D 従来の方法は加工帳を頼りに大工が木材を加工し、柱や天井などの型枠を製作していた。一般的な型枠工事では、2-4割の時間が加工に充てられる。その時間を短縮できるのは大きい。

イワイ工業のNC機械。合板を加工して最適な型枠を製作する
E 平米単価で請負契約を結ぶ大工が加工場で作業する時間を大幅に削減し、より多くの時間を現場作業に充てられる。1日当たりの施工量が増加することで、収入が増え、休日も取得しやすくなるなどの処遇改善が期待できる。
A 鹿島や岡部などが開発した「型枠一本締め工法」も記憶に新しい。
C 型枠一本締め工法は、型枠工事で約70年ぶりに開発された新工法だ。型枠工事の締め付けを従来の鋼製パイプ2本からアルミ製パイプ1本にすることで、歩掛かりの大幅な向上と技能者負担軽減を実現した。鹿島が導入した東京都内の建築現場では、パイプ荷揚げの総重量が約56%減、歩掛かりが約20%向上した。
F 橋本店は、仙台市発注の小学校校舎改築工事で東北地方の建築工事に初めてこの工法を採用した。グループ企業の橋本不動産も導入に必要な仮設資機材のリースを始めた。橋本店の受注工事現場で施工する専門工事業者に貸し与えて新工法の普及促進を図っている。長年にわたって技術革新が進んでいなかった型枠工事に生産性向上の波が着実に押し寄せている。