◇能登地震・豪雨を教訓に被害シナリオ具体化
A 能登半島地震から1日で1年が経過した。本紙でも8日付から被災地の現状を伝える全5回の連載を展開した。被災地の復旧は着実に進んでいるものの、いまだ道半ばにある。
B 能登では地震と豪雨が立て続けに発生し、甚大な被害を招いたことが苦境に追い打ちをかけている。地震で地盤が緩んだところに大雨が降り斜面崩壊が発生するなどして被害の拡大につながった。
C こうした複合災害への対策強化に向けて、国土交通省は河川工学や砂防工学などの専門家で構成する検討会を立ち上げた。先発の災害の影響が残る状態で後発の災害が発生し、単発の災害と比べて被害が拡大することを複合災害と定義した上で、ハード・ソフト両面で被害を防ぐための効果的な対策を議論していく。2024年度内にも一定の取りまとめを行う予定だ。
D 14日の初会合では複合災害で見込まれる被害の発生シナリオが提示された。例えば地震で堤防が沈下したところに大雨が降り、その堤防から氾濫が発生するといったように、先発災害の被害に起因する後発災害の被害との対応関係を整理したものだ。委員からも意見が出ていたが、対策の検討に当たっては被害発生シナリオを多様化、具体化していくことがポイントの一つとなりそうだ。
B くしくも初会合前日の13日には宮崎県日向灘を震源とする震度5弱の地震が発生した。南海トラフ地震との関連はないと判断されたが、依然として巨大地震の切迫性は高い状態にある。加えて、豪雨災害の激甚化・頻発化を考えると、能登のような災害は全国いつどこで起きてもおかしくない。単発の災害はもとより、複合災害への対策の加速化が一層求められている。
◇群馬は国際コンペでメインストリート再整備
A 話は変わるが、地域の活性化につなげるため、全国各地で道路空間の再構築に向けた動きが活発化している。
E 群馬県は、県庁からJR前橋駅に通じる約1.5㎞のメインストリートの再整備に向け、24年10月に県庁~前橋駅の道路空間を中心とした都市空間デザインの国際コンペを公告し、40年を見据えたデザインの提案を求めた。県庁~前橋駅を県庁~本町二丁目五差路交差点、同交差点~前橋駅などに区分した上でデザインを考案するとしている。
D 横断歩道橋以外に歩行者の横断の手段がないことや、国道や県道、市道を利用する自動車交通量に対応できていないなどの問題を抱える五差路交差点をどのように再編するかも重要となってくるだろう。
E 13日から1次審査通過作品が県庁や前橋市役所などで公開展示されている。提案対象道路と細街路が交わる場所をハブとし、街中のにぎわい創出につなげる提案などが閲覧できる。最優秀提案者の賞金は国内最大級の2500万円という点も注目されている。
C 大阪市も道路空間の再編に取り組んでいる。19年に策定した御堂筋将来ビジョンに基づき、御堂筋を車中心から人中心の道路空間に再構築するため、側道を歩行者空間にするための整備が進んでおり、現在長堀通からなんば広場(仮称)までを順次整備している。シンボルストリートに相応しい街路景観を創出するための空間づくりやデザインの考え方などを示したガイドラインも24年に策定している。
A 国交省が推進しているウォーカブルなまちづくりが各地に根付きつつあるようだね。一人の市民として歩きやすい街中が形成され都市の魅力が増すことを期待したい。