清水建設は25日、東京都江東区にある技術研究所本館エントランスに採用した3次元自由曲面ガラスファサードを報道機関に公開した。従来のフラットなガラスにはないデザイン性の高さが売り。最大300mmの起伏(凹凸)がある。同社によると同様の大きな起伏を備えたガラスファサードは国内では例がないという。「設計者に究極のデザイン自由度を提供し、設計者の創造力を刺激する技術」として、積極的に売り込む。
同社は、自由曲面を採り入れたガラスファサードの研究開発に国内でいち早く着手し、「3Dガラススクリーン構法」として開発した。ガラスファサードデザインの自由度が飛躍的に向上するとともに、懸念されていたガラスの耐震性や施工性の課題もクリアした。最大300mm程度の起伏を表現でき、曲率は半径150mm程度まで対応できる。
今回の改修工事は、この構法を全面適用した。デッドスペースとなるリブガラスは使用せず、薄厚のガラスに剛性(変形防止性能)を持たせた。既存のガラスとの調和を図るため、下端から人の視線の高さまではフラットな仕様とすることでデザイン性を高めるとともに、耐震性と耐風圧性も確保。さらに、ガラス越しの映像が歪まないよう配慮するなど、さまざまな性能を追求した。
こうした性能をパラメターにして、コンピュテーショナルデザインによりファサードの形状を70パターン抽出。既存ガラスとの整合を重視してパターンを絞り込んだ。高さ、幅を既存ガラスに一致させ、ガラス天端の曲げが一番大きく、下端になるにつれて徐々に波が小さくなるパターンを選定した。
選定した形状の場合、単層・合わせガラスに関係なく、厚さ10mmを確保すれば設計可能だが、既存ガラスとの厚みの差などを考慮して、今回は厚さ16mm(8+8mm)の合わせ化学強化ガラスを採用した。起伏のあるガラスの形状自体が変形を防止するため、リブガラスがいらない。また、地震時の建物の層間変形に追従できることや、耐風圧性能を備えていることを実証実験で確かめた。
同社技術研究所の松尾隆士建設基盤技術センター内外装グループ長は、「唯一無二のデザイン価値を付加価値として提供できる技術。昨今のデザイン性の高いガラスファサードと比べても十分提案できる価格」と自信を見せる。今後は各種大規模施設のエントランスや商業施設のファサードなどに積極的に提案する。