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【建築家・小堀哲夫氏】愛着を生む建築づくり/過去と未来を橋渡し/経済性を超える価値創出

最終更新 | 2025/04/09 10:04

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 未来に続く建築–。世界に数え切れないほどの建築物が存在する中、独創的だからといって、後世に残したいと人々に思ってもらえるとは限らない。一方で、一見何の変哲のない建築物でも、市民にとってなくてはならないかけがえのない存在となることもある。大切にしたいと思われる建築に共通するものとは何なのか。建築家・小堀哲夫氏はその問いに「愛着」を挙げる。小堀氏に、愛着を生む建築づくりに必要な視点を聞いた。 小堀氏が設計をする際に大切にしているというのが「過去と未来の橋渡し」だ。2018年の火災で全焼した老舗旅館『べにや』(福井県あわら市)の再建設計では、「従業員の皆さんとワークショップを行いながら調査を重ね、この場所にかつてあった価値を掘り起こしていった」

 ここで欠かせないのが「ノスタルジックにただ過去のことを調査するのではなく、未来につながる種を探す」という視点であり、まさしくこれは設計者が過去と未来の間に立つことを意味する。

光風湯圃(こうふうゆでん)べにや (c)Satoshi Shigeta


 この過程では、文化人類学的な発想で「背後にある物語を網羅的に深く読み込む」ことが大切となり、こうして初めて、「その場所に眠っている真の価値を見つけ出すことができる」という。発見して終わりではなく、新たな価値を付加し、過去から続くひとつながりの物語として、「建築が文化として捉えられるようにする」ことが、愛着を育む取っ掛かりになるのだ。

 こうして21年夏にリニューアルオープンした『光風湯圃(こうふうゆでん)べにや』は、24年に日本ミシュランタイヤによるホテル版ミシュランガイドで一つ星の『1ミシュランキーホテル』に選出。旅館女将から小堀氏のもとに、『訪れる皆さん喜んでくれる。建築の力はすごい』とたびたび電子メールが届くことからもわかるように、従業員、利用者双方に愛される建築に仕上がったといえる。

有楽町側から見た新・帝国劇場エントランス((c)Tetsuo Kobori Architects) *イメージパースは今後変更の可能性がある


 現在設計を手掛けている3代目・帝国劇場(東京・丸の内)も、場所の価値を読み込んでいった。2月28日、その歴史に幕を下ろした2代目・帝国劇場は丸の内の地に、縦基調の景観を生んだ。「設計者の谷口吉郎さんが築いた建築のプロポーションや縦のデザインは非常に重要な要素で、美しい街並みの一つとして再解釈したいと思った」からこそ、日本モダニズム建築の名手として知られる谷口吉郎が生んだ価値を、新たな劇場でも参照しているという。もちろんこの場所も、過去をただ再現するだけではない。

 敷地西側はイチョウ並木が続くほか、皇居のお堀に面して、開かれた空間になっている。こうした場所性を感じさせる「障子のような柔らかいフィルター」を外壁にまとい、「室内にいる人にも光や木々の色合いの変化が感じられる、ここだからこそできる建築」を考案した。

 小堀氏はこう話す。「モダニズムは空が飛べる。米国でもアフリカでも日本でも、どの場所でもモダニズム建築をつくることができる。しかし文化は空を飛べない。文化は土地に根っこを生やしていて、そこにあるからこそ価値がある。土地の環境・文化と建築がしっかりとくっついていることが、非常に重要だ」と。

 土地に根ざした建築だからこそ、人々はどこか安心感を覚え、愛着が育まれていくのだ。

 べにや、帝国劇場など小堀氏の作品の設計過程に共通する、場所の歴史の中から価値を見いだし、新たな物語を紡いでいく姿勢は、リノベーションにも当てはまる。小堀氏の考えるリノベーションは、「かつてあった建物を文化財的に保存するということではなく、その上に次の時代を重ねていくということ。絵の具で新しい色に塗り替えるのではなく、下地が少し見えるように蛍光ペンで色を足していく」ことだと話す。

武蔵野公会堂改修((c)Tetsuo Kobori Architects)*イメージパースは今後変更の可能性がある 光風湯圃べにや((c)Satoshi Shigeta)


 現在改修設計を進めている武蔵野公会堂(東京都武蔵野市)は、当時日建設計工務(現日建設計)に所属していた建築家の林昌二と山下和正による設計で、彼らの建築観が確立する前の作品だ。しかし、林の「ツインコアシステム」、山下によるフロム・ファーストビルの「レンガ張り」という、「お二人の建築思想やディテール、意匠」が、武蔵野公会堂には既に芽生えていた。

 市民には知られていないだろうその価値に重ねるのが、ツインコアを門に見立てたファサードだ。近接する都立井の頭恩賜公園には芸能の神、弁財天が祭られており、かつての参道入り口に設けられた『黒門』が今でも残っている。そこで、人々が気軽に立ち寄れる新たなゲートをつくるため、既存外壁を一部取り除き、ツインコアを門に見立てることで、「新しい価値を見いだした」

 この価値を市民に発信し、身近なものに感じてもらうことも、愛着を育む上で大切な取り組みだ。例えばこの場所では、館内を徹底的に練り歩くことができる探索マップをつくった。イラスト満載のマップを見ると、建築の細部までわかる。

 こうした愛着を生む建築づくりの必要性はますます高まっている。なぜなら、高度経済成長・バブル期のように建物が次々と建てられる時代ではなくなった人口減少時代のいま、建物を建てる重みがこれまでと比べて増しているからだ。加えて社会の価値観も多様化し、「お金で還元できないような価値に目を向ける時代になってきた」

 「そもそも建築家には、経済性を凌駕した価値を提示できる能力が求められている」というその価値があってこそ、建築は時代を越えて受け継がれていく。

 

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