【記者座談会】日建連が新長期ビジョン/自治体の技術者不足 | 建設通信新聞Digital

7月27日 日曜日

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【記者座談会】日建連が新長期ビジョン/自治体の技術者不足

◇持続可能な建設業に向けて認識共有

日建連の長期ビジョンでは若者からの応募を基に建設業の未来予想図を示した


A 日本建設業連合会が新たな長期ビジョンを発表した。どんな内容かな。

B 2050年を見据えながら、今後10年間をターゲットに建設業が目指すべき道筋や具体的な方策をまとめている。AI(人工知能)やロボットの活用などで生産性を25年比で25%向上させることや、技能者の平均年収を40代で1000万円超とすることなどを目指している。

C 思い切った目標だが、裏を返せば建設業の持続性への危機意識の表れともいえるだろう。長期ビジョンには歯止めがかからない技能者の減少や、物価高騰の一方で進まない価格転嫁など、現状に対する問題意識がつづられている。新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)を実現して選ばれる産業に変革することは不可避だ。

D 15年に発表した旧長期ビジョンを契機に、社会保険の加入をはじめ、現場の休日確保、技能者の賃上げ、女性技能者の増加、建設キャリアアップシステムの運用など、官民を挙げた取り組みが実を結んだ。新たなビジョンの下、多くの関係者が認識を共有して持続可能な建設業を実現する取り組みが一層進むことを期待したい。

B 宮本洋一会長が理事会後の会見で言及していたように、建設業の未来予想図も長期ビジョンの目玉の一つだ。若者に募集したアイデアをAIで統合し、ロボットが活躍する現場や月面施工などのイメージを描いている。一般の人にも建設業の将来像が直感的に伝わるんじゃないかな。

C 応募した若者たちも50年には30代の働き盛りから60代の経営層とまさに建設業界を支える人材となっているはずだ。彼らの活躍によって未来予想図が現実のものとなることを願いたいね。

◇課題も多様化 省人化、採用強化が急務

A 一方で、自治体の技術者不足も深刻だ。国土交通省の調査で、都道府県と政令市の約7割が発注関係事務の遂行は職員だけでは難しいと認識していることが明らかになった。

E 総務省の調査によると、23年度の土木職員数は13万8870人。ピーク時の1996年度からは約28%減となっている。インフラ更新への対応に追われる中、入札不調の増加も相まって業務がさらに増えているとの声も聞く。現場の苦悩の一端がうかがえるね。

D 一部業務を委託する場合でも、受託先の委託量の制限や職員のノウハウを蓄積する機会の減少といった課題が指摘されている。対策を探る中で課題も多様化してきている感じがある。

F それでも、事態を踏まえて各自治体は懸命に対応している。東京都は技術系職員などに対する奨学金の返還支援を今年度から始めたし、被災建築物の応急危険度判定へのDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入検討を進めるなど、省人化にも意欲を燃やしている。

E 職員確保に向けた採用の通年化や採用時の適性検査の実施なども各自治体で導入が進んできたね。とはいえ予算などの制約上、こうした取り組みはどうしても自治体ごとに差が生まれてしまう。

F だからこそ国から都道府県、都道府県から市区町村など、自治体同士の支援や情報共有の枠組みが重要だ。今月、各ブロックで開かれた監理課長等会議では実態を確認し、市区町村の発注体制強化に向けた働き掛けを申し合わせた。

A 建設業界の健全な発展に向けて公の果たす役割は大きい。持続的・安定的な社会資本の整備・維持のためには、自治体の人手不足への対応も急がれる。

 

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