【父の死きっかけに看護師から事業承継】鈴機商事社長 鈴木百合子 氏 | 建設通信新聞Digital

7月29日 火曜日

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【父の死きっかけに看護師から事業承継】鈴機商事社長 鈴木百合子 氏

鈴木社長

 建機のレンタル・リース、販売、修理などを手掛ける鈴機商事(神奈川県藤沢市)。2024年12月から経営のかじを握る鈴木百合子社長は、「建設機械・機器の地域密着型アドバイザーとして、人々の豊かな生活と社会の発展に貢献する」との経営ミッションを掲げ、働き方改革などに取り組み、「会社をより良い形で繁栄させたい」と力を込める。前職は看護師で、予期せぬ転身からキャリアをスタートさせた鈴木社長に経営方針などを聞いた。

 創業者である父・鈴木達雄氏の長女として生まれた鈴木社長は当初、事業承継をまったく考えておらず、看護師として働いていた。達雄氏が病に倒れ、14年に亡くなるが、「父の闘病生活の際に身の回りの世話などをしていて、入院中でも会社のために働いていた父の姿から、命懸けの熱意を感じた」。これを切っ掛けに入社を決意し、同年から取締役として経営に携わった。

 社長就任までの10年間、業務を通して自社や建設業界の知見を深めつつ、家事・育児と並行して大学院で学び、MBA(経営学修士)を取得。そこで培った経験や人脈も生かし、DX(デジタルトランスフォーメーション)化を見据えた業務の電子化や、産休・育休・完全週休2日など福利厚生制度の整備、人事評価制度の改善などを進めた。

 「個人主義・売り上げ至上主義という以前からの社風に起因して、コミュニケーションや部署間・営業所間の横連携に不足がある」との課題認識の下、社長就任後の今年1月、経営ミッションをはじめとする経営者としての考えをグループ企業を含む社員など80人以上の前で説明した。その後も面談などを通して浸透を図った。「私の考えをどの程度受け入れているかは、各社員が持つ価値観により異なる。根気強い対話が必要」と気を引き締める。

ことし5月の建機展の風景。商談の他、顧客が家族に建機を通して仕事を紹介することもできるイベントとして、子ども向けコーナーも設けた

 一方、考えが社員を通じて社外に伝わり、取引の拡大や取引先との関係強化につながったとの手応えも感じている。同社が例年主催する建機の試乗や購入相談を行うイベント「建機展」では、今年5月開催の第42回目にして協賛62社、展示台数約150点と過去最大の規模を実現した。

 建設関連会社の事業承継について、「業界未経験の女性ということで差別的な体験をしてつらい思いをすることも山ほどあったが、その時々にできるベストな行動を取り続けてきた」と振り返りつつ、「未経験だからこそ建設業界で当たり前と見なされている状況の改善へ取り組める面がある」とも。後継者候補を選ぶ際、従来と異なる人材にも視野を広げる意義を指摘した。

 

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