企業のBIM導入が進展する中で、蓄積データの利活用がニーズとして広がり始めている。「良質なソフトに最先端の機能を加えることが、グループ全体の強みになっていく」。Arentの鴨林広軌社長は、グループ化した構造ソフトの一貫構造計算ソフト『BUILD.一貫』と工程表作成ソフト『現場ナビ工程』に、強い「期待」と「自信」を持っている。
建築確認申請では2026年春からBIM図面審査、29年春からはBIMデータ審査がスタートし、『BUILD.一貫』のBIM対応力がより強く求められようになる。大手・準大手ゼネコンに浸透する『現場ナビ工程』も、BIMデータとの密接な連携によって工程の自動化が他のソフトとの差別化を生む。Arentはプロダクト事業で、既存のソフトウエアにAI(人工知能)を組み込むことで操作性を格段に高める「AIブースト戦略」を展開しており、両ソフトにも年内をめどにAI機能を搭載する計画だ。
Arentグループの目指すアプリ連携型プラットフォームは、最適な専門アプリケーションをAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)で連携し、業務間のシームレスなデータ共有を実現する。たとえば『現場ナビ工程』は積算系や原価管理系、タスク管理などの専門システムと連携することでより合理的なツールとして進化できる。
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略が拡大し、多様化するニーズに対応できるようにするには、より多くのアプリケーションを取りそろえる必要がある。25年1月に構造ソフトを完全子会社化してから、これまでに3社をグループ化した。鴨林氏は「グループ会社を増やすことで、連携効果はさらに強みを増す。当初は年2、3社ペースを目標に置いていたが、現在はそれを上回るペースで進んでいる。3年後にはアプリ連携型の一定の形を示せるだろう」と手応えを口にする。
M&A(企業の合併・買収)候補のアプリケーションベンダーは中小規模が多く、成長に向けて開発や営業のリソースを限られている課題を抱えるほか、中には事業継承の問題に悩んでいるケースも少なくない。「営業支援の全国体制を早急に確立していく。遅くとも1年後にはグループインした段階で、すぐに全国営業がスタートする状態をつくりたい」。初弾となる構造ソフトとの密接な連携の構築が、そのベースを形づくる。
構造ソフトの原泰紀社長は「これまでリソース不足を理由に敬遠してきた企業からの業務受託にも、積極的に乗り出したい」と強調する。これまではユーザー側にツールの使い方を委ねていたが、これからArentグループ内の連携が動き出せば、ユーザー側に最適なデータ活用の存り方を提案する流れになってくる。「これまでの経験を生かし、新たなアプリケーションの開発にチャレンジしたい」と先を見据えている。
鴨林氏は「営業や開発の支援を通して構造ソフトの良さや課題を、われわれは肌感として受け入れられる。これがさらなるプロダクトの進化を生むきっかけになる」と力を込める。アプリ連携型プラットフォームは良質な専門アプリケーション群が連携し合い、多様な要求に迅速な対応を図る姿を目指している。見逃せないのはArentが営業や開発の支援役にとどまり、グループ会社を主役に位置づけている点だ。強い求心力を武器に、建設DXを新たなステージに導こうとしている。