◇複数自治体で転売防止、非居住課税検討も
A 先の参院選で争点の一つとなった住宅問題を取り上げたい。東京23区の新築マンションの平均価格は1億円を超えており、いわゆる「不動産バブル」の状態だ。高騰の一因には投機目的での外国人の購入が指摘されている。
B 開発用地が限られている東京では、1億円を超えたマンションでも買い手がつく。そうしたマンションを購入しても実際には居住せずに、値上がり益を狙って転売することが問題視されている。
C 参院選では、外国人の投機目的での不動産取得に税負担を求めたり、住宅購入そのものを制限すべきなどと、各党がさまざまな公約を打ち出していた。これまで野放しになっていた外国人富裕層のマネーゲームに歯止めを掛けるべきとの論調が目立っていたね。
D 行政側も動きを見せている。東京都千代田区は国外からの投機目的でのマンション購入を防止するよう、区長名義で不動産協会に要請した。市街地再開発などの事業で販売するマンションについて、購入者が引き渡しを受けてから原則5年間は転売できない特約を設けることや、同一建物で同一名義人による複数物件の購入禁止などを契約に盛り込むよう求めた。
C 一方、協会側は規制をかける必要があるのか疑問を呈していて、区に対しては実態を把握すべきとの考えを示している。
B 神戸市では投機目的での購入などでタワーマンションの空室が増えるのを防ぐために、空室所有者に対する課税を検討している。京都市でも非居住住宅の所有者を対象とした「非居住住宅利活用促進税」を導入し、2029年度から課税開始する予定だ。
D 非居住住宅の増加はまちづくりをはじめ、修繕などの管理などで支障を来す恐れがある。今後の動向に注目したい。
◇目的の解像度高め利用者目線のオフィスに
A ところで、設計事務所では近年、働く場の在り方を模索し自社オフィスで実践している事例が見受けられる。先日はNTTファシリティーズが本社オフィスをリニューアルし、「FL@T(フラット)」という社内共創スペースをオープンした。内覧会はどうだった。
D リモートワークを経験し、対面コミュニケーションの重要性が再評価されてきている中、ただ場所を設ければ良いという考え方ではなく、出社してどのような仕事や活動をしたいのか、目的を解像度高くイメージすることが大切だと感じた。整備の効果が早速表れていて、出社人数が25%から40%に上昇したという。
C 日建設計の本社オフィスにも「PYNT(ピント)」という共創拠点があり、社員からの紹介があれば、社外の人も利用できる。社内外の人がおすすめの本を紹介する図書コーナーやカフェもあり、構えることなく気楽な気持ちでその場にいる人との交流が楽しめる。
D 開設から2年たった今年4月時点で累計来訪者は1万8000人に達した。さまざまな立場・分野の人がここで出会い、実装に向けたアクションへと発展したプロジェクト数は29を数えるという。
C ある大手建設関連企業の部長がここを訪問した際に、「当社もこれくらい思い切ったオフィスづくりをしたい。しかし、なかなかここまでできないのが実情だ」と言っていたのが印象的だ。
B 大多数の企業が同じ状況だろう。しかし、優秀な人材を確保するため、また、企業の持続的な発展のためにも、このオフィスなら「もっと成長できそう」「新しいアイデアが思い浮かびそう」などと思ってもらえる場づくりはより重要になりそうだ。未来のオフィスがどのような姿になっていくのか、楽しみだ。