【BIM未来図】シグニファイ(中) 計画と実測の誤差なくす照明設計/現況把握に信頼パートナー | 建設通信新聞Digital

9月25日 木曜日

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【BIM未来図】シグニファイ(中) 計画と実測の誤差なくす照明設計/現況把握に信頼パートナー

浜松球場の照明設計は、グローバル展開するオランダ照明器具メーカーのシグニファイの中でも18人しかいない社内最上位資格「グローバルスポーツエキスパート」に認定されたシグニファイジャパン(東京都品川区)の篠塚泉バリュー・クリエイション部アプリケーションスペシャリストが手掛けた。

点群と球場施設の3次元データを統合


スポーツ施設では、競技ごとに明確な照明基準が定められている。同社のLED投光器は発光範囲が狭く、ピンポイントで明るく照らせる性能があり、競技エリア全体を照らす条件下では投光器の台数をより最適化できる。篠塚氏は「照明塔のある高さ40mの位置から競技エリアを照らす際、投光器同士の照射エリアのぶつかり合いをなくすことにより、均一な照度環境を確保できる。そのためにも計画と実測の誤差をどれだけなくすかが重要」と強調する。

照明設計は、3次元計測によって周辺を含む点群データを取得し、球場の現況3次元モデルを作成することから始まった。ある国内大型スタジアムの照明改修を手掛けた際には、実測した結果と竣工図の位置が最大3mほどずれていたこともあった。特に高さ40mにも及ぶ照明塔の明確な位置を割り出す際には地上からの計測では難しい。「まずは現況の明確な把握が重要になり、点群計測と統合モデル化の信頼できるパートナーに依頼した」と明かす。

担当したのは当時、オノコム(愛知県豊橋市)でVDC(バーチャルデザインコンストラクション)推進室長だった林和弘氏。オートデスクのBIMソフト『Revit』を本格導入する同社の中で、3次元計測による現況データと建物モデルを統合する独自の設計スタイルを確立した中心的な役割を担っていた。現在は独立し、VDC(東京都千代田区)代表を務める林氏はドローンを使って6基の照明塔を含む球場全体を4時間かけて3次元計測したデータを球場施設の3次元データと連携させた統合モデルを作成し、「照明の光源位置を厳密に位置付けた」と強調する。

以前の照明塔には1基当たり72ものHID(高輝度放電灯)投光器が配置されていた。篠塚氏は「その光源位置を明確に把握できなければ、的確な照明設計を実現できない。林氏の協力なしに厳密な位置を割り出すことができなかった」と付け加える。光源位置は投光器の可動軸から200mmほど前の部分になる。改修前は光源位置がバラバラの状態だったが、球場外に光が漏れる光外は基準を満たしている状態だった。

浜松球場の照明設計では、現況データと建物データを組み合わせたVDCの統合モデルが基盤となり、最適な照明パターンを割り出してきた。「この課程が照明デザインで一番楽しい」と語る林氏は、オートデスクのビジュアライゼーションソフト『3ds Max』を主軸に、照度計算に強い『V-Ray』と、フォトリアルにたけた『Corona Renderer』という二つのレンダリングソフトで作業を進めた。

シグニファイジャパンの原田朋治コネクテッドソリューション推進部プロジェクトセールスマネージャーが「海外では実績のある野球場の照明改修だが、国内では浜松球場が初の取り組みだった。今回の実績が次へのきっかけになる」と先を見据えているように、リニューアル後の浜松球場の照明塔は1基当たりの投光器数を半分の35、36個に減らし、大幅な省エネも実現した。しかも1基当たりに五つの演出照明を設置することで、エンターテインメント性も付加した。同社はみなとみらいや金沢港などのライトアップも数多く手掛けており、「光演出の部分でも当社の強みを発揮することができた」と強調する。

ドローンで4時間かけて球場周辺の点群取得



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