オートデスクが主催した「家具に関するBIMの意見交換」には、業務用家具メーカーからイトーキ、オカムラ、オリバー、コクヨ、アダルなど6社、内装ディスプレー会社からゲンスラー・アンド・アソシエイツ・インターナショナル・リミテッド、丹青社、乃村工藝社、船場、ワークパス、パワープレイス、三井デザインテックの7社が参加した。
内装ディスプレー分野では、先行して丹青社が2022年にオートデスクとBIMデータ活用に向けたMOU(戦略的提携)を結んだように、3年ほど前からBIM導入の動きが広がり始めた。空間づくりにおける顧客との合意形成にBIMの可視化効果が有効に機能することから、現在は社を挙げてBIM導入に取り組む流れが鮮明になっている。今年2月には丹青社が新たなステージに向けたMOU2.0、8月には船場がCDE(共通データ基盤)構築に向けてMOUを結んだ。
オートデスクの羽山拓也技術営業本部長は「家具メーカーによるBIMデータ標準化は、BIM導入にかじを切った内装各社にとっての大きな推進力になる。両者の考え方を共有できるように、今回初めて意見交換の場を設けた」と明かす。開催に先駆けて参加企業への事前アンケートを実施し、標準化に向けた課題整理も進めてきた。
アンケートによると、BIMの導入については内装各社と同様に、家具メーカーも合意形成や業務の効率化をメリットに挙げていることがわかった。課題については家具メーカーごとにデータ仕様が異なり、内装会社が求めるファミリ構成になっていない状況が浮き彫りになった。家具メーカーでは提供データが独自仕様になっている上、標準化の前例もない点を危惧している一方で、データ提供時に内装会社の使用目的の詳細が不明である部分も課題の一つとして示された。
BIM標準化については、両者ともBIMデータの新たな利活用につながるとし、内装各社にとってはメーカーごとの仕様を理解する手間が削減でき、家具メーカーにとっても日々の繰り返しの修正業務を改善できると考えていることが分かった。オートデスクのシャフ愉季ソリューションエンジニアは「内装各社は積算などへの展開、メーカーは発注効率化などに期待を示し、ともに前向きな捉え方をしている」と付け加える。
このように標準化への期待は高いものの、意見交換では標準化の実現にはまだ多くの乗り越えるべき課題があることが見え隠れした。内装会社の設計担当はイメージに合うような家具のファミリデータを選択して、空間の収まりを確認しており、作業の中でそのデータのパラメーターを自ら微調整する際にはどの設定を変更すればいいか、判断しにくい状況があるという。BIMスキルに関係なく対応がしやすいように「データ階層を少なくし、パラメーター項目も必要最低限にすべき」との声も上がった。
BIMデータから数量算出を展開している内装会社では、顧客の環境配慮ニーズが高まりを見せる中で、家具製作における排出CO2の数値なども盛り込んでほしいとの意見も出た。そのような付加価値部分の数値をパラメーターにどこまで盛り込むべきか。標準化を議論する上でまだ積み残している課題が多いことも分かった。
特に意見交換では、作り手である家具メーカーと、使い手である内装会社それぞれが同じ目線から標準データの在り方を考えるべきとの視点も話題になった。そのきっかけになったのはオブザーバーとして参加した先行する建築設計事務所側のアドバイスだった。














