【JIA建築家クラブ連続講座】「まつもと市民芸術館は一か八かだった」 伊東豊雄氏がコンペ振り返る | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【JIA建築家クラブ連続講座】「まつもと市民芸術館は一か八かだった」 伊東豊雄氏がコンペ振り返る

 日本建築家協会(JIA)建築家クラブ金曜の会が主催する伊東豊雄氏による連続講座「アジアから発信する建築」の第3回「続・我がコンペティションの歴史」が行われた。7月の前回に続き、2005年ごろから最近までの応募作などを振り返りつつ、それぞれの作品に込めた設計思想などを語った。
 『まつもと市民芸術館』(長野県松本市)は、敷地の形状に合わせた配置計画から、「最初に落とされるか、ユニークな提案を面白がってくれるか一か八かの勝負だった」と振り返った。
 『カリフォルニア大学バークレー美術館』は、ホワイト・キューブの美術館への疑問を投げ掛けつつ、曲面の壁の上下にスリットを設けることで「水が流れるように部屋間を移動できる」イメージを提示したものの、リーマン・ショックの影響から実施設計の途中で計画中止となったことを残念がった。
 また、『バルセロナ見本市・グランビア会場』は、ノーマン・フォスターやドミニク・ペローなど世界の名だたる建築家が指名される中、「1棟ずつ分け合うことを想定していたが、すべて任された」ことで、これまで手掛けた作品の中で「最大の床面積になった」という。
 住宅街の中にあえて閉じることを強調した『座・高円寺』(東京都杉並区)では、審査時の建築家グループと演出家グループとのやり取りを振り返りながら、自らマイクを握ってステージに立った事務所設立40周年のイベントにも使用した思い出深い作品に挙げた。
 『コニャック・ジェイ病院』(パリ)では、選択肢を2案用意したところ、「やりたいものをやってほしいと突き返された」というエピソードを紹介。「議論が盛んな国」における地元説明会は、紛糾したものの、終了後には説明者と参加者がワインを酌み交わしたという。
 このほか、18年中の完成を目指している『新青森県立陸上競技場』や、木材を活用した『新しい水戸市民会館』(水戸市)、『南洋理科大学』(シンガポール)など、木材を活用した新たな取り組みなども紹介した。

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