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【45°の視線】建築史家・建築批評家 五十嵐太郎氏 寄稿 磯崎新の教養とサブカルチャー

最終更新 | 2023/01/19 10:19

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 先月末に亡くなった磯崎新とは、書籍、雑誌の座談会やインタビュー、展覧会、シンポジウムなどの企画で、幾度も話をする機会があった。どんな質問を投げ掛けても、すぐに膨大な情報量を伴う答えが返ってきて、驚くべき頭脳の持ち主だったと思う。もちろん、それは建築だけでななく、思想、文化、芸術、歴史など、圧倒的な教養を持っていたからなのだが、いわゆるハイカルチャーだけでなく、サブカルチャーにも目配せしていたことは特筆に値する。そもそも彼に筆者の名前を認識してもらったのも、それがきっかけだった。

 磯崎が企画した1996年度アーキテクチャー・オブ・ザ・イヤーでは、4人の若手の建築家や研究者を指名し、その後有名になった貝島桃代らによる東京の複合施設をポップに表現するリサーチ・プロジェクト「メイド・イン・トーキョー」が世界で初めて発表された機会となった。筆者(当時29歳の博士課程に所属する大学院生)は、田中純が担当するフランス革命と建築のセクションを手伝い、磯崎アトリエで行われた打ち上げに参加する機会に恵まれた。このとき突然、磯崎がエヴァンゲリオンを知っているかと発言し、僕だけが知っていたのである。おそらく、彼は所員から教えられたのではないかと思うが、最初のテレビシリーズの放映が終わった段階で、映画化される前だったので、世間的にはブレイクする以前だった。筆者はテレビ放映は見ておらず、『ユリイカ』96年8月号の「ジャパニメーション」特集を読んだら、多くの論者が取り上げていたので、途中までDVD化されたものを借りていた状態である。

軽井沢の礒崎別荘、執筆のための書斎


◆『エヴァンゲリオン』と『ツイン・ピークス』の逸話
 その後、社会現象になり、第三書館の編集者と縁があって、量産されていた謎本ではなく、批評をちゃんとやろうというコンセプトのもと『エヴァンゲリオン快楽原則』(自分の名前が背表紙にのった最初の本)の編著を担当したり、『エヴァンゲリオン・スタイル』に寄稿した。献本はしなかったので、どうも磯崎は、これらの本を書店で購入していたのである。というのも、彼と篠山紀信が組んだ『建築行脚』(六耀社)の写真はそのまま残しつつ、本文を入れ替えて、ソフトカバーの本でつくりなおす『磯崎新の建築談義』(2001-04年)の企画が持ち上がり、全12巻の対談相手として筆者が指名されたからだ。すなわち、建築史を専門としながら、エヴァンゲリオンも語るような新しいタイプの若手として認識されたのが理由である。優秀な西洋建築史の研究者はほかに数多く存在するが、あえて正統から外すことで、歴史建築だけにとどまらず、近現代の建築からサブカルチャーにいたるまで、幅広く議論をしようと考えたようだ。まさに本連載のタイトル通り、「45°の視線」である。

 建築談義の企画では、合計で15回ほど集中的に議論したが、雑談で印象に残ったことを紹介したい。90年代の初頭、デヴィッド・リンチが総監督を務めたテレビ・シリーズ『ツイン・ピークス』が流行した際、やはり彼は視聴していた。もちろん、筆者も大いにハマり、大学の研究室で話題にしていたが、磯崎は武満徹や大江健三郎といったそうそうたる人たちで、ビデオを回していたという。途中で誰かのところで止まって、催促したエピソードも聞いたが、おそらく横断的な議論を行う雑誌『へるめす』(1984-97年)の編集同人のメンバーと重なっている。

 ポストモダンの時代は教養をよく知った上で、サブカルチャーも議論の対象に入るようになった。が、21世紀を迎えると、サブカルチャーの評論は、もはやめずらしいことではない。一方でかつてアカデミーで存在した知らないことは恥ずかしいという教養の抑圧がなくなった。その結果、現代のサブカルチャーには詳しいが、歴史的な教養には明るくない論者が増えたのではないか。が、言うまでもなく、サブカルチャーは明示されていなくともさまざまな形で古典の影響を受けている。磯崎という巨星を失ったいま、改めて彼の知性の在り方から学ぶべきことは多いのではないか。


 

(いがらし・たろう)建築史家・建築批評家。東北大大学院教授。あいちトリエンナーレ2013芸術監督、第11回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展日本館コミッショナーを務める。「インポッシブル・アーキテクチャー」「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」などの展覧会を監修。第64回芸術選奨文部科学大臣新人賞、18年日本建築学会教育賞(教育貢献)を受賞。『建築の東京』(みすず書房)ほか著書多数。


 

  

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