再利用型の宇宙輸送機を利用した旅客・貨物輸送の事業化を推進する将来宇宙輸送システム(ISC、東京都中央区、畑田康二郎CEO)は、宇宙輸送機が離発着する「次世代型宇宙港(NSP)」の設備や事業性を検討するワーキンググループ(NSP-WG)を企画し、参加企業を募集している。8月から2025年11月にかけて活動し、宇宙港の将来像を発信する。
同社の嶋田敬一郎CBO(最高事業責任者)は、「空港、港湾や鉄道駅など、既存の旅客・貨物輸送拠点に関わるビジネスをNSPにも拡大できないか、という方向性の関心を持つ企業に参加してほしい。宇宙に関する知見は問わない。」と説明する。NSPの施設整備に関わる業界からの参加を想定しており、6月末までをめどに問合せを受け付ける。
宇宙産業を身近にするには輸送コストの大幅低減が必要だが、従来の宇宙輸送機は1回限りの使用でコスト高となっていた。ISCは、90年代に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が実証した再使用技術を商用化し、低コストな宇宙輸送機を日本でも実現すべく機体の開発を進めている。20年代後半の多段式輸送機による事業開始、40年ごろに単段式宇宙輸送機(SSTO)の運用を目指す。SSTOによる輸送では、乗客50人、ペイロード(輸送能力)10トン、1000回以上の飛行を可能とし、2地点間高速輸送(地球上のあらゆる2地点間を1時間以内で飛行)や、地球周回軌道への人や物資の輸送を想定する。
NSP-WGのコンセプト例では、国内太平洋沿岸の陸上拠点と、移動可能な洋上設備との連携を想定し、相乗的効果を得られる複数のモジュールを段階的に組み合わせる。モジュールは「打上げ設備」「着陸設備」「エネルギー設備(発電や蓄電)」「商業設備」「宿泊設備」「災害対策設備」など。モジュールごとに分離・移動させ、着陸・回収した機体を陸上拠点で保守・管理したり、気象条件やユーザーのアクセス性に合わせた移動も可能とする。既存のロケットなど打ち上げ施設との連携も視野に入れ、他社の輸送機も受け入れる。陸上拠点は、各種整備施設だけでなく、人やモノの輸送ハブとしての機能を想定し、NSPを起点としたレジリエントなまちづくりにつなげる。