奥村組と名古屋大学は、人体への有害性が指摘されている有機フッ素化合物(PFAS)の浄化技術を開発した。カーボン(炭素)を使って触媒する技術のさらなる高活性化に成功し、水溶液中でさまざまなPFAS類が酸化分解可能であることを確認した。汚染された河川水からPFASの一種であるペルフルオロオクタン酸(PFOA)の99%以上を吸着除去するとともに、その一部も分解できることも分かった。
開発技術は、名大物質科学国際研究センターの山田泰之准教授(大学院理学研究科)と田中健太郎教授(同)のグループが開発した超強力酸化触媒「金属錯体担持カーボン触媒」を使ってPFASを酸化分解する。
山田准教授らは、2階建て型構造を持つ金属錯体触媒をカーボンに担持(土台となる物質の上に他の物質を付着)することで酸化活性が大きく高められることを見いだし、天然ガスの主成分であるメタンなど、難反応性の有機物の酸化反応に利用してきた。
2023年9月に両者は共同研究契約を締結。カーボン触媒のさらなる高活性化を実現し、7月19日に特許を出願した。今後は、触媒にさらなる改良を加えるとともに、開発技術をPFASによる汚染された地下水・土壌の浄化工事などに適用する。
多くの産業分野で利用されているPFASは「永遠の化学物質」とも呼ばれ、自然界でほぼ分解されず、人体や環境中に長く残る特性を持っている。
PFASの一種であるPFOAやペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロヘキサン酸(PFHxS)は、人体への悪影響が明らかとなっており、国際的には「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」で、日本国内では「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」で製造・輸入・使用などが制限されている。
河川水や地下水、土壌においては、現在のところPFASの環境基準値が定められていないが、国内での検出事例が報道されるなど汚染問題が顕在化している。
現状では、活性炭などの吸着剤にPFASを吸着させて環境中から除去する方法が用いられているが、吸着できる量に限りがあるほか、吸着剤の処分も問題になっている。