【多様に広がる建設ICT活用⑬】IHIインフラシステム 『CIM-GIRDER』でフロー改善 | 建設通信新聞Digital

5月2日 金曜日

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【多様に広がる建設ICT活用⑬】IHIインフラシステム 『CIM-GIRDER』でフロー改善

自動干渉チェックシステムに期待

 国内外でさまざまな橋梁設計・製作・建設の実績を持つIHIインフラシステムは、オフィスケイワン(大阪市、保田敬一社長)の鋼橋CIMシステム『CIM-GIRDER』、下部工付属物システム『CIM-KABUKO』を使い、橋梁関連業務へのBIM/CIM対応を図っている。今後も受注案件へのCIM適用を拡大していくとともに、ソフトの新機能開発にも協力し、力を合わせてより便利なCIMフローの構築を目指していく。

河上氏(右)と井上氏

 同社の橋梁技術本部では、手入力をなくすこと、生産計画の情報を一元化すること、原寸システムを抜本的に変えていくこと、を大きな取り組み課題としており、同本部デジタル改革部ICT推進第2グループの河上祐作氏は「オフィスケイワンのCIMシステムはそのための重要なツール」と位置付ける。

 建設関連企業がCIMなどのIT化に対応する場合、ソフトを自社で開発するケースもあるが、ベンダーが開発した優れた製品をみんなで使っていく選択肢もある。

 同社は日本橋梁建設協会のワーキングやセミナーなどで『CIM-GIRDER』の存在を知り、2023年8月に1ライセンスを契約。その後、1ライセンスを追加し、下部工付属物システム『CIM-KABUKO』も2ライセンス契約している。

 「従来は複雑な線形を3Dモデルや図面に反映させるのは大変な作業だったが、『CIM-GIRDER』は橋梁に特化しているため、熟練者でなくても短時間でそういったことができる。導入時にオフィスケイワンのスタッフから説明を受けた当社のオペーレーターが、数日で3Dモデルを作れるようになり、慣れればかなりの効果が見込める」(同第1グループの井上麻子氏)と感じており、これまで10工事でCIMに取り組んでいる。「今後も地域を問わずどんどん使っていく方針で、鋼床版などにも対応していきたい」(河上氏)。将来的には適用案件の拡大を見据えてライセンスの追加も予定している。

作業の様子

 「価格が良心的でインターフェイスも分かりやすく、ユーザーサポートの面でもヘルプが充実し、問い合わせなどにもすぐ対応してもらえる」(井上氏)とその使用感に満足しており、使い勝手や機能向上のための要望・相談にきちんと耳を傾けてもらえる点も高く評価しており、同社は要望を出すだけでなく、大きな可能性を見出している鋼橋自動干渉チェックシステムについては、共同開発者となって積極的に関わっている。

 発注図をもらっても図面通りだと干渉が起きるといったミスがあれば協議・修正などが必要になってくるため、生産性を高めるためには早い段階で干渉を把握することは重要だ。「ただ、従来は2次元の図面で『当たっているのでは』と思った部分を自分でチェックして干渉を見付けていく。これを自動でやってくれるなら見落としもなくなる」(河上氏)とその効果に期待を寄せる。

 さらに、同社は建設コンサルタンツ協会と日本橋梁建設協会が共同開発した中間ファイル(設計情報属性ファイル)を使った設計と施工のデータ連携にも取り組んでいる。中国地方整備局発注の令和5年度福光・浅利道路2号橋鋼上部工事では、『CIM-GIRDER』に中間ファイルの読み込み、書き出し、変換レポート作成の機能を付与し、データの手入力をなくす自動原寸システムにつなげ、工場製作データを完成させる。

 国土交通省の試行対象工事としてこの効果を検証したところ、工場製作データの作成で1割弱(約20時間)の作業時間短縮効果が確認でき、今回の工事で確認できた課題などに対応すればさらなる効率化を見込めるという。

 橋梁上部工事では現場での架設のほか、工場での製作もあるため、設計・施工だけでなく生産段階にもCIMを活用するモノづくりの設計連動を進めることにもなる。溶接量など製作に必要なデータや工場の繁閑といった情報を効率的にリンクさせていくことに取り組んでいく。



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