【人工光合成実現へ工程表】30年にCO2電解を社会実装/環境省 | 建設通信新聞Digital

9月3日 水曜日

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【人工光合成実現へ工程表】30年にCO2電解を社会実装/環境省

人工光合成の社会実装イメージ(産業分野)


 環境省は2日、第3回「人工光合成の早期社会実装に向けた取組加速化に関する検討会」を開き、人工光合成の社会実装ロードマップ案をまとめた。太陽光やCO2から化学製品原料を生み出し、CCU(CO2回収・利用)技術の一つでもある人工光合成を2050年ネット・ゼロの実現に役立てるため、30年にCO2電解技術の社会実装や、35年に光触媒・光電極による水素製造を社会実装する道筋を打ち出した。

 脱炭素社会を目指す中で、どうしてもCO2排出がゼロとならない分野では、排出量を可能な限り削減した上で、残るCO2を新たな価値ある「資源」として転換可能なCCU技術の確立が求められている。そこで期待されている革新的技術が人工光合成だ。CCU技術の一つで、太陽光のエネルギーと水・CO2から燃料や化学品を生成できる。現時点では研究・開発段階の要素技術も多いが、この分野で日本は世界トップクラスの技術力を持つという。

 この優位性を生かし、コスト低減やスケールアップなどの課題を克服しながら、中長期的視野で社会実装を進めようと今回のロードマップ案をまとめた。これで脱炭素にとどまらず、エネルギー安全保障や産業競争力の強化にもつなげる狙いもある。

 案は全体版と、その詳細を記した「電解系」「光触媒系」の要素技術別に示した。要素技術の一つである微生物系は、その多くが基礎研究段階であるため、技術要素別ロードマップは作成せず今後の進展に応じて対応を検討する。

 全体版では、人工光合成の社会実装に向けた道筋を明示。技術の性能・規模、経済性、制度・インフラの各観点から、技術開発・実証、サプライチェーン構築、制度・市場整備を並行的に進め、人工光合成を産業レベルで普及させることとした。

 初期段階では各技術の基礎性能向上やスケールアップを進め、中長期的には製造コスト低減や耐久性向上、サプライチェーンの実証を行う。合わせて、国際標準化や需要創出支援、人材育成、CO2削減効果算定方法の標準化など、制度面の整備も進める。これにより、40年には人工光合成技術のみによる基礎原料の量産化や高付加価値物質の製造を実現し、ネット・ゼロ実現への貢献を目指す。

 一方、要素技術のうち電解系では、共電解技術を核に高電流密度・高変換効率といった性能向上や大型化、部材コスト低減を進めるとともに、光触媒や水電解で得た水素との組み合わせによる最終製品一貫製造のサプライチェーン実証を段階的に展開する。再エネ変動電源への追従性確保、大容量化によるCO以外のC1(メタン、メタノールなど)などの製造、共電解による直接製品化なども視野に入れる。30年にCO2電解技術を社会実装し、35年にCO2電解由来のCOと水電解由来の水素による最終製品を製造して、40年に共電解による最終製品製造を目指す。

 光触媒系では、水素やC1などの生成における太陽光変換効率向上、大型モジュール化、耐久性向上を主な課題とし、光電極デバイスの開発や分離・収率改善、安価材料の探索も並行して実施。電解などと組み合わせた最終製品製造や、地域分散型の水素サプライチェーンの実証も行う。35年に光触媒・光電極による水素製造を社会実装し、40年に光触媒・光電極由来の水素とCOなどを活用した最終製品製造を目指す。

 

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