【データセンター】福岡に第3のハブ構築、インタビュー・APL日本代表の高原氏 | 建設通信新聞Digital

1月13日 火曜日

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【データセンター】福岡に第3のハブ構築、インタビュー・APL日本代表の高原氏

【インタビュー・九州に「第3のハブ」構築へ アジア・パシフィック・ランド(APL)グループ最高投資責任者(アジア)及びアジア・パシフィック・ランド・(ジャパン)・リミテッド・日本の代表者 高原義宣氏】

◇次世代インフラ担う九州DC開発の最前線


 APL(アジア・パシフィック・ランド)は、アジアへの地理的優位性がある福岡に、東京・大阪に次ぐデータセンター(DC)の「第3のハブ」としての可能性をいち早く見いだした。AI(人工知能)の爆発的な普及に伴う巨大テック企業間の「覇権争い」が、DCの需要を押し上げる中、同社はさらなる拠点拡大を計画している。高原義宣氏は、北九州市、福岡県糸島市に続く第3拠点の整備も前向きで、「ビジネスに不可欠なインフラを九州から提供し続ける」考えを明かす。

--データセンター事業に参入した理由は

 きっかけは、コロナ禍の2020年に、APLグループ・ニューヨーク事務所のリサーチチームと開始した次世代投資対象に関するリサーチにある。調査を進める中で、日本におけるデジタルインフラのさらなる供給の必要性を確信するに至った。衝撃的だったのは、21年当時の日本における1人当たりの使用データ容量が、米国の06年時点と同水準にとどまっていたことだ。この「需給のアンバランス」は、裏を返せば巨大な事業機会にほかならない。そう判断し、参入を決意した。

--なぜ東京都や大阪府ではなく、福岡県だったのか

 一つ目の理由は、今後のデータセンターハブ形成において、東京や大阪は土地や電力の確保が既に困難であることだ。この状況は、米国のデータセンター市場がバージニア州アッシュバーンから他地域に移った06年ごろの状況と酷似しており、日本でも「第3のハブ」が誕生する必然性があると分析した。
 二つ目は災害リスクの分散だ。外国人投資家は地震リスクに敏感だ。九州は地震の発生頻度が比較的低く、特に福岡県は日本海側に位置するため、大都市が集中する太平洋側とは災害リスクの相関があまりない。
 安価な電力コストも理由の一つだ。九州は、再生可能エネルギーが豊富で、電力の約3分の2がカーボンニュートラル(原子力発電を含む)であり、安定供給可能な原子力発電の存在もある。
 九州北部は、国内のハブにとどまらず「東アジアの一角を担うポテンシャル」を秘めている。東京よりもソウルや上海に近く、東南アジアなどから伸びる海底ケーブルが福岡県に陸揚げされるため、国際的なデータ中継拠点として魅力的だ。

--人材面での九州の強みは

 九州は炭鉱、製鉄、自動車など長年日本の基幹産業を支えてきた歴史があり、技術者を供給できる教育システムが整っている。特に北九州市では、大学や高専から年間約3000人の理工系人材を輩出しており、新産業を育てるための「卵たち」が豊富にいることは、中長期的に最も重要な要素だ。

--プロジェクトの進捗は

 ファーストムーバー(先行者)としての優位性を確保するため、市場がまだ早いと見ていた20年末から土地探しを始め、現在は2拠点の開発を計画している。北九州市の案件は、キャパシティーが120メガワットで、設計は日建設計が担当している。土地は取得済みで、26年に1棟目の本体工事に着手したい。
 福岡県糸島市の案件は、キャパシティーが最大300メガワット、6棟の建物を予定している。26年早期には造成工事に着手する見通しだ。ともに電力容量については、現段階での各敷地の最大上限として計画している。

--北九州市と糸島市の2拠点に分散している理由は

 データセンターには「アベイラビリティーゾーン(AZ)」という冗長性の考え方がある。東京圏であれば、千葉県印西市、神奈川県相模原市、東京都多摩地域の3カ所のように、一定の範囲内で拠点を分散させることで、万が一の障害時にも、AZ内のほかのデータセンターにおいて、システムを維持できる体制を構築している。また、AZの考え方は、広大な平地が少ない日本において、大規模なデータセンターを運用するための現実的な判断でもある。引き続きAZの形成とニーズを意識しながらデータセンターの開発を進めたい。

--建設コストの高騰は事業に影響しているか

 建設コストの上昇は世界的な傾向であり、われわれもテナント候補もそれを前提に協議している。ただ、海外のハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)から見れば、円安の影響でドル建ての賃料はそれほど高騰していないという側面もあり、現時点でコストを理由に計画を中断することは考えていない。

--施工者の選定基準は

 高い電力効率が求められるデータセンターは、建築と設備の工事費比率について、設備の方が大きくなっている。そのため、施工者選定においてもゼネコンだけでなく「どこが設備工事を担当するのか」が重要視される。ハイパースケーラー向けの案件では、使用する機械や設備がテナント側から細かく指定されることが一般的だ。

--AIの普及は今後の事業にどう影響するか

 AI時代は、インターネット革命に匹敵する大きな変化だ。現在はハイパースケーラーや各国政府による「AIの覇権争い」の最中にあり、電力需要は爆発的に増え続ける。われわれは、このビジネスに不可欠なインフラを九州から提供し続けることで、時代のニーズに応えたい。