
三の神殿部材の再利用作業
熊本地震で被災した阿蘇神社の復旧工事が清水建設の施工で進められている。全壊した重要文化財の解体を担当するのは同社として初めて。重要文化財の解体・再建は全国的にもあまり例がなく、高い技術力が要求される。今後、熊本城の再建も計画されており、文化財復旧の先行事例としても注目される。
阿蘇神社は、熊本地震により国指定重要文化財6棟が甚大な被害を受けた。国庫補助による復旧工事が2022年度にかけて実施され、清水建設は全壊した楼門の解体・調査と、損壊・部分損壊の5棟の部分解体・修理を担う。拝殿と翼廊は阿蘇神社の自費事業で先行解体した。

復旧工事は16年10月31日に起工、11月7日から三の神殿の部分解体・修理に着手、12月1日から27日にかけて楼門を覆う素屋根(高さ9.8m、幅22.5m、奥行き25.3m)を建設し、ことし1月10日から素屋根の中で楼門の解体に取り組んでいる。現在は、銅板屋根のはぎ取りが終わり、小屋組と呼ばれる屋根を支えていた材料の解体を進めている。
楼門は入母屋造、唐破風、2階建ての風格のある造りで江戸時代末期に建設された。再建はできるだけ元の部材を再利用することが求められており、部材は人の手で1つずつ確認しながら解体・収集する。また、建物の詳細な図面がないため、これ以上の倒壊は許されず、解体は荷重バランスを考慮しながら行う。解体した部材は境内に新設した保存倉庫に移管し、損傷状況を調査している。
損壊した5棟は神殿3棟と2門。このうち、損壊の激しい三の神殿の部分解体・修理を先行着手した。始めに建物の骨組みに付随する浜縁や組物などの造作部材を解体し、骨組みをあらわにして、柱の傾きや補修の要否などを調査する。部材の再利用では、破損した部材個所に解体した拝殿の台湾ヒノキを使うなどの工夫も行う。
清水建設の川原裕貴工事主任は「前例がない工事。細心の注意を払い工事を進めたい」と意気込みを語った。