【記者座談会】2019年がスタート | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【記者座談会】2019年がスタート

A 生産性革命「貫徹の年」がスタートを切った。昨年末に政府が閣議決定した2019年度予算案は、公共事業関係費が前年度から9310億円の増額となる6兆9099億円。伸び率にして約15%の大幅な増加となるなど、建設産業にとっても一定の実需を担保するものとなった。近年にない公共事業費の伸び率は、年始の賀詞交換会でも話題の1つになっているようだ。
B 閣議決定を受けて、コメントを出した日本建設業連合会の山内隆司会長も「昨年度を大幅に上回る画期的な公共事業予算」としているように、安定的かつ持続的な公共投資の確保を求めてきた建設産業界にとっては明るいニュースだと言っていい。
C ただ、19年度予算での公共事業関係費の増加は、10月の消費税率の引き上げや、重要インフラの緊急点検を踏まえた「防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策」の推進に対応する“臨時・特別の措置”によるところが大きい。ベースとなる予算額に臨時・特別の措置を上乗せする『通常分+臨時・特別措置』の2段ロケットになっている点を踏まえれば、この「15%増」という伸び率を単純に鵜呑みにすることはできない。
D 実際に“予算書の作り”をみても、いわゆる通常分と、臨時・特別の措置をきっちり切り分けている点が何ともいやらしい。この臨時・特別の措置が、あくまでも消費税率の引き上げに伴う需要変動を抑制するための19・20年度に限定した“イレギュラーな措置”である点を強調しているかのような表記の仕方は、ある意味で、社会資本整備の「量」から「質」への転換や、公共投資の総額としての抑制を主張してきた財務省の意地も感じさせる。

昨年は自然災害が多発し、甚大な被害をもたらした。防災投資を着実に執行し、国民の安全・安心につなげなければならない(写真は2018年7月豪雨の被災地)

3年後の増額確保へ勝負始まる

C 事実、この臨時・特別の措置を除いた公共事業関係費は前年度の5兆9789億円から807億円の増額となる6兆0596億円。伸び率にして1.3%に過ぎない。しかも、その大半は消費増税への対応分となっていることから「通常分の実質的な増加額は(過去3年と同様の)26億円」(財務省)という。
A 予算編成をつかさどる財務省サイドの視点に立てば、通常予算におけるシーリングはきっちり効いているということか。
C とはいえ「防災・減災」「国土強靱化」をキーワードに、その推進に向けた集中的な“防災投資”の絵姿が示されたことは事実。これまでの「想定」を上回る大規模な自然災害が頻発化している現状からすれば、取り組みの推進に先鞭(せんべん)をつけるだけのインパクトある予算になっていると言えるのでは。
D かねて防災・減災、国土強靱化の重要性を訴えてきた佐藤信秋参院議員も、公共事業関係費が前年度比15%の増加となる点に「取り組みの必要性を理解していただいた結果」と評価する一方で、緊急対策の3年間だけでなく、10-15年スパンでの計画的な強靱化投資の必要性を強調。特に20年度までの3カ年緊急対策が終了する「3年後をどうしていくか、これが非常に重要になる」としているように、既に臨時・特別の措置がなくなった後の公共事業予算のあり方を強く意識している。
A 少なくとも現状はベースとなる“通常分”の予算で安定的かつ持続的な“増額確保”を堅持しているわけだが、臨時・特別の措置がなくなった後に公共投資の規模がガクンと落ち込むことがないように国土交通省を中心に防災・減災、国土強靱化の推進を支える公共投資の必要性を強く訴えていくことが求められる。3年後の“増額確保”へ、勝負はもう始まっている。

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