日本建築美術工芸協会(aaca、岡本賢会長)は20日、東京都千代田区の日本大学駿河台校舎1号館で30周年記念事業となる2019景観シンポジウム「これからの都市景観のあり方を探る@GINZA」を開催した。設立者の芦原義信の名著『街並みの美学』を下敷きに日本を代表する都市景観を持つ“銀座”の変遷を振り返りつつ、“銀座ルール”と呼ばれる都市計画を交えながら、銀座を代表するランドマークの設計者がそこに込めた思いなどを紹介した。
都市計画家の中島直人東大准教授の基調講演に続いて建築史家の陣内秀信法政大特任教授が進行を務めたシンポジウムでは、銀座を代表する商業ビルを設計した3者が登壇。それぞれが銀座の都市景観をどのように読み解き、生き生きとしたまちへの貢献などを紹介した。
このうち、「三越銀座店」「GINZA SIX」を設計した坂本弘之鹿島専任マネジャーは、「西側に比べて人通りが少ない東側に人を呼び込むための仕掛けが求められた」とし、路地の記憶を呼び起こす建物内のパサージュやテラス、屋上庭園など、さまざまなアクティビティーを生み出す“憩いの場”となるハードの工夫を紹介。「さらにソフトが充実することで、街がより良くなるきっかけになってほしい」と語った。
東急プラザ銀座の設計を担当した日建設計の畑野了設計主管は、銀座数寄屋橋を借景して立体的に捉えることで、建築の中にパブリックスペースをつくることを意識し、6階と屋上にパブリックスペースを配置。その上で「銀座ならではの体験をいかに一つひとつの建築で創出していくかをこの先も考えていく必要がある」と強調した。
「GINZA PLACE」を始め、複数のプロジェクトに携わった山本実大成建設設計本部室長も「江戸から続く街区構成と均一な外壁ラインが、銀座独特の平面的なにぎわいを生み出している」とし、GINZA PLACEでは、「それを垂直に引き上げる取り組みを試みた」という。さらに銀座4丁目に向けた取り組みなど、まちとの関係を構築できる範囲で工夫することが大事だとした。
また、事業者と中央区の間で地区計画“銀座ルール”の調整役を担う銀座街づくり会議の竹沢えり子事務局長は、「単なる規制・禁止ではなく、銀座らしさを徹底的に話し合うこと」が目的であり、「ある程度の共同化は仕方がないものの、街区の共同化や建物の大規模化・超高層化は望まない」と独自の都市景観を維持する取り組みを紹介。その一方、時代とともに銀座ルールの見直しも進めており、「今後は商業床中心のまちから用途バランスを考えたまちづくりを志向し、住宅など夜間人口を加味したい」と語った。
マーケティングアナリストの三浦展氏は、人口が大減少する2034年以降に訪れる“第5の消費”について、「小売業は消滅し、人と人が直に対面するサービスが生き残る」との予測を示した。さらに地方の郊外化の波で風景が均一化し、地域の独自性が失われる“ファスト風土化”が「再開発が進む都心にも見られている」とし、消費からパブリック、ソーシャルへと軸足が移る中、「銀座の文化を発信する拠点が必要だ」と指摘した。
公式ブログ
【aaca】銀座の過去と未来が見えてくる「これからの都市景観のあり方を探る@GINZA」開催
[ 2019-02-27 ]