【記者座談会】「新・担い手3法」成立/応援の適法化 | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

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【記者座談会】「新・担い手3法」成立/応援の適法化

A 建設業法・入札契約適正化法(入契法)と、公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)の改正法がいずれも成立し、今国会で「新・担い手3法」が制定された。これまでの担い手3法と比べた改正のポイントは。
B 新たに強く打ち出したのは工期についての規定だ。前回改正の2014年からの5年間で、長時間労働が社会的な問題として大きく注目され、建設業でも時間外労働の上限規制の適用が迫る中、工期の適正化への対応が急務となっている。
C 改正法では、注文者に著しく短い工期による請負契約の締結を禁止する規定を新設した。中央建設業審議会が作成する工期に関する基準を基に、違反者には国土交通大臣などから勧告を行う。改善が見られない発注者は公表するなど実効性を担保していく。
D 長時間労働につながりかねない公共工事の年度末の集中工期も是正する。発注者の責務として、債務負担行為や繰越明許費の活用など施工時期の平準化の取り組みを定めた。
C これまで都道府県などからは、平準化のために債務負担行為などを活用する際の根拠となる規定を求める声があった。今回の法改正で明確な規定が示されたことから、今後はさらに強力に自治体の平準化を推し進める考えだ。
D 工期の適正化以外にも、一定の条件を満たすケースで監理技術者の複数現場で兼任を認める専任緩和や、情報通信技術の活用を受発注者の責務とするなど生産性向上の側面から働き方改革を後押しする規定も盛り込んでいる。
B 14年の担い手3法の施行後は歩切りの根絶やダンピング(過度な安値受注)対策などで成果を出してきた。新・担い手3法でも、効果を発揮するだろう。長年の慣習は一足飛びには改善しないが、一歩ずつでも新3K(給与・休暇・希望)の実現へ、業界一丸となって歩みを進めなければならない。

改正建設業法、改正品確法のいずれも、衆参院ともに全会一致で可決された (写真は5日の参院本会議)

全鉄筋 技術研さんで合法的に融通

A ところで、全国鉄筋工事業協会の総会で、“応援”を技術研さんのための行為に位置付けることが決まった。
E 繁忙期に職人(技能者)が足りない専門工事業者が、同業他社に人手を融通してくれるよう頼むのが“応援”だ。応援を要請した側と応援した側が請負契約を結べば問題ないのだが、応援にいった職人が応援要請をした専門工事業者の職長の指揮・命令系統のもとで作業を行うことがある。これは“派遣”に当たり、建設労働者の派遣を認めていない労働者派遣法に違反する可能性があるという指摘がかねてからあった。
A しかし、そんなことはみんな普通にやっているだろう。
F 建設業界ではすごく一般的な行為だが、実は違法だ。戦後、制度・慣習は大きく変化し、さまざまなことが変化してきた。ところが、建設業では、社会保険未加入問題のように、社会的には当たり前でなくなったことが、“慣例”として続けられた結果、社会の仕組みからかけ離れた行為が続いていることが多々ある。全鉄筋は、これだけ大きく時代が変わろうとしている中で、「慣例だから」では許されなくなるという強い危機感があったようだ。
A 応援を技術研さんにすれば、違法ではなくなるのか。
E 全鉄筋は、もう5年ほど前からこの件で厚生労働省や国土交通省と協議してきた。その中で、「繁閑調整のための応援」は法律違反だが、「技術研さんを理由とした人のマッチング」ならば、法律違反とは言えないという感触を得た。完全に白とは言えないかも知れないが、「建設業の“普通”は違法」という状態からは脱出できる。
F 応援は、鉄筋に限らず、他職種でも、一般的に行われている。他職種がどれほど危機感を感じているかにもよるが、今後、全鉄筋の考え方や取り組みが広がる可能性は否定できない。

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