【記者座談会】列島に猛暑襲来/地方自治体のくじ引き | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【記者座談会】列島に猛暑襲来/地方自治体のくじ引き

◆熱中症対策と強靱化に不断の努力

A 今週前半は、気温が39度を超える地域も出て、命に関わるほどの猛暑が続いた。

B 炎天下で作業する建設業の人たちにとってはたまらない。現場ではウオータークーラーの設置を進めたり、建築の現場では中層階に空調が効いた詰め所を設けるなど対策はしているが、それでも厳しい暑さだ。

C 厚生労働省の速報値によると、2023年上期(1-6月)の建設業の労働災害は新型コロナウイルス感染による労災を除いて、死亡者数、休業4日以上の死傷者数ともに減少した。下期のさらなる労働災害防止に向けて夏の熱中症対策の徹底が重要だ。

B 安全な職場は担い手確保の大前提だ。ただ、屋外に立つだけで危険を感じる昨今の夏を思うと、一歩進んで快適さを目指していかなければ、他業種との人材獲得競争に遅れを取りかねないと感じる。

A 日本に暑さをもたらす太平洋高気圧は、勢力が強まると梅雨前線を北に押し上げる。そこに高気圧の縁辺を回って暖かい湿った空気が流れ込み、停滞先に豪雨をもたらす。

B 九州に続いて北陸・東北地方が豪雨の被害を受けた。特に秋田県では、道路の冠水や家屋の浸水、河川の氾濫などの大きな被害を受け、県営ダムでは緊急放流を実施した。鉄道も秋田新幹線をはじめ、複数の在来線が運休した。

C 毎年、日本のどこかで記録的豪雨が観測され、もはやリスクゼロの地域はないように思う。国土強靱化は文字どおり終わりが見えない。

B 防災インフラの着実な整備は必須だが、厳しい財政状況に直面する地方自治体も多い。対策が後回しとならないよう、流域治水の仕組みなどを活用して国や関係する地方自治体との横のつながりを持ち、問題を共有することが大切だろう。

東京都心は37.5度を記録。35度以上の猛暑日を全国163地点で観測した(18日撮影)

企業・社員の命運、くじが左右は“不健全”

A ところで、東京都が22年度の工事契約状況を公表した。物価高の影響で資材が高騰している中で不調発生率が改善したのは意外だった。

D 先行きが不透明な中、東京都の工事に対する関心が高まるのは自然な流れかもしれない。ただ、今後の動向は注視すべきだろう。

A 気になるのは、建築業種のくじ引きが例年の1桁台から20件超に増えたことだ。

D くじ引きは、長年の自治体の公共事業の大きな課題だ。総合評価方式の導入後、国土交通省の直轄工事でほとんどくじ引きは起きていないため、正直、まだくじ引きが頻発している状況に驚きを感じる。

E 国交省と自治体の契約担当者が入札・契約制度適正化について意見を交わす23年度上期ブロック監理課長等会議でも、一部の都道府県でくじ引き発生率が5割を超えていることが話題に上った。

F 地域の建設業経営者と話をしていても最近、くじ引きが話題に上る。自嘲気味に「来客者に好きな数字を言わせて、それで入札したら落札できた」なんてあきらめ顔で言われると本当に悲しくなる。中国ブロック監理課長等会議では「経営者に賃上げを求めても、落札できるかどうか運次第ということでは賃上げの意欲にも影響を及ぼす」という意見が出たようだ。少し厳しい言い方をすれば、企業、社員、技能者の命運を左右する行為をくじで決めるというのは、“健全”とは言えない。

E 昔から言われてきたことだけど、自治体の発注者が、単なる発注者ではなく、産業行政の意識をもっと持つべきだ。それこそが「公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)」の精神だと思う。

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