【ICT舗装】効率化&品質向上を実現「建機搭載型出来形管理システム」 前田道路らが開発 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【ICT舗装】効率化&品質向上を実現「建機搭載型出来形管理システム」 前田道路らが開発

 i-Constructionの推進は建設業界全体の課題であり、道路舗装業も例外ではない。前田道路、法政大、三菱電機エンジニアリングが共同開発した「建機搭載型出来形管理システム」は、舗装工事の中間工程への面管理による出来形管理を可能とし、大幅な作業効率化と品質向上を同時に実現する技術だ。すでに現場テストで目標とした計測精度や解析時間を満たすことを確認しており、汎用化を目指してさらなる信頼性の向上などに取り組んでいる。

建機搭載型出来形管理システムのイメージ


 ICT舗装工では、面管理のためのデータ計測が必要だが、計測からデータ処理、出来形の品質確認にそれぞれ時間を要するため、中間工程の路床工や路盤工では適用が進んでいない。

 前田道路らが開発した建機搭載型出来形管理システムは、仕上がり面の形状をタイヤローラーに搭載した小型高精度レーザースキャナーで計測し、取得した3D点群データを現場に設置した自動追尾型TSでリアルタイム処理することで、中間工程での面管理による出来形管理を可能とした。計測結果はクラウドシステムで共有できるため、発注者が現地を訪問せずに遠隔臨場を実施することもできる。

現場試行の様子


 3者は、2017年度から開発に向けた意見交換を始め、18年度に共同研究を始めた。前田道路が「現場ニーズ、要求性能の定義、現場に応じた計測手法・運用の検討、フィールド実測・評価」、法政大が「現場に応じた計測手法・運用の検討、出来形管理データ処理技術の開発」、三菱電機エンジニアリングが「レーザー計測装置・舗装出来形計測システムの開発、フィールド実測・評価」といった役割を担っている。

 移動する重機への3Dレーザースキャナーの搭載には、位置管理や振動の影響など課題が多くあり、三菱電機エンジニアリングの平謙二メディアシステム事業所副事業所長兼業務部長兼電子機器システム部長は「普通のレーザースキャナーを建機に乗せるだけでできるような技術ではない」と説明する。前田道路の加藤康弘工事事業本部工事技術部ICT推進課課長は「舗装工事は表層面ではプラスマイナス4mm、路盤や路床ではプラスマイナス10mmの計測精度が要求されるので、安定したデータを取得できるようにするには苦労があった」と振り返る。

左から平氏、加藤氏、今井教授。手前モニターは中村教授(左)と塚田講師


 開発に当たっては、舗装工事の現場へ広く普及させることを念頭に置き、ICT舗装工の技術的要求事項を満たしつつ、従来技術では4000万円以上かかるコストを5分の1以下とすることを目標に据えた。平氏は「一般に普及させるには低コスト化が重要なポイントだ」と強調し、5分の1以下という目標は「実現できるレベルにある」と話す。

 同技術は、国土交通省の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に選定されており、前田道路が福島県伊達市で施工する東北地方整備局福島河川国道事務所発注の「富沢地区舗装工事」などで現場テストを実施。また、20年度i-Construction大賞では優秀賞を受賞している。

 今井龍一法政大デザイン工学部教授は「PRISM採択によって『産・学』のプロジェクトから『産・官・学』のプロジェクトになったことが成果につながった」と語る。今井教授とともに研究に取り組む中村健二大阪経済大情報社会学部教授は「点群データが舗装現場に身近になり、さまざまなものが簡単に計測できるようになる一事例として浸透していくのではないか」と期待を示し、塚田義典摂南大経営学部講師は「コロナ禍で遠隔臨場のニーズが高まる中、3次元データの研究が活用され嬉しく思う」と述べる。

 今後は、ハード面やソフト面の信頼性を確立し、汎用化による社会実装を目指して、さらに複数現場での試行を重ねていく予定だ。



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