【記者座談会】22年度の概算要求/学校設計で提案競技 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【記者座談会】22年度の概算要求/学校設計で提案競技

 2022年度予算の概算要求額が発表されたね。

 一般会計の概算要求総額は111兆円台となる見通しで、4年連続で過去最大となる。要求総額が100兆円を上回るのは8年連続だ。国土交通省の一般会計の要求額は6兆9349億円だった。基準に沿って最大限要求しており、規模は例年どおりといったところ。今回の特徴は、脱炭素化やデジタル化などの成長分野で特別枠を設けたことかな。省エネ化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みなどに優先的に予算が配分される。

 年末の予算案の決着までの注目点は、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策だろう。今回の一般会計の総額には含まれておらず、今後の予算編成過程で検討していく。

 昨年、閣議決定した5年間で事業規模15兆円に対応する予算額を等分して計上するのではないのか。

 話はそう簡単ではない。この事業規模は財政投融資や民間事業者などによる事業を含む額で、国費額は定めていない。また、「各対策の実施段階における諸調整の結果等により変動する場合がある」との注釈もつけられており、あくまでも目安だ。

 コロナ対応に加え、相次ぐ豪雨災害の発生で補正予算の編成を求める声も上がっている。膨らむ歳出を減らしたいと財務当局が考えるのは自然な流れだろう。

 国交省の概算要求資料の記者ブリーフィングの場では、20年度補正と21年度当初予算のいずれも順調に執行されているという説明があったにもかかわらず、繰越額に関する質問が出ていた。公共投資が増えて予算が執行できていないというシナリオを描きたい人は少なからずいる。

 20年度第3次補正が成立した時もこの場で述べたが、自治体を含む発注者と協力して早期に事業を執行することで、施工余力が十分あることをアピールし、当初予算での対策費用確保を目指す必要があるということだ。

国交省の概算要求概要。脱炭素化やデジタル化といった成長分野で特別枠を設け、省エネ化やDXの取り組みなどに優先的に予算が配分される



“脱価格競争”の追い風に

 話は変わるけど、国土交通、総務、文部科学の3省が連名で地方自治体に学校施設の設計者選定でプロポーザル方式などの適切な活用を要請したね。

 現状の設計者選定の大部分は価格競争で実施しており、市区町村では業務でのプロポーザル方式の導入が進んでいない。6月に自民党の知的財産戦略調査会がまとめた提言も今回の要請を後押しした。提言では、公共建築施設の設計者を価格競争で選定するケースが多く、知的生産者である設計者の技術力や経験、創造性を最大限活用できていないと指摘し、「公共調達における知的生産者の適切な選定」を盛り込んだ。学校建築については、積極的なプロポーザル方式の導入を要請している

 設計業務などの“脱価格競争”を強く求める声は建築設計界からも上がっていた。20年11月には「知的生産者の公共調達に関する法整備連絡協議会」のメンバーを中心に「知的生産者選定支援機構」が発足した。地方自治体に対する選定プログラムの策定支援や、設計者選定に関する審査員の推薦・派遣などによって、知的生産業務の質による評価を促すのが目的だ。

 3省の要請は脱価格競争の追い風になりそうだ。地方財政が厳しい中、少ない予算を有効活用するためにもアイデアで競争しなければならない時代になっている。学校施設の質の向上に向け、地方自治体がどこまで今回の要請に応じることができるのか、動向を注視したい。



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