【カザベラジャパン】創刊10周年特別記念講演会に安藤忠雄氏ら 建築への思い語る | 建設通信新聞Digital

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【カザベラジャパン】創刊10周年特別記念講演会に安藤忠雄氏ら 建築への思い語る

 アーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ、丸山雄平社長)とイタリア文化会館は18日、『カザベラジャパン』創刊10周年特別記念講演会を東京都千代田区の同会館で開いた。建築家の安藤忠雄氏とプリツカー賞審査委員長も務めるオーストラリアの建築家、グレン・マーカット氏、それにCASABELLA(カザベラ)編集長のフランチェスコ・ダルコ氏の3人が「私の歩んだ道」をテーマに建築への思いを語った。
 カザベラは、イタリア・ミラノで1928年に創刊。世界でも権威のある建築雑誌として広く愛読されている。その日本語版としてASJが「カザベラジャパン」を発行しており、ことしで10周年を迎える。 
 講演では安藤氏が「建築が面白いのは体験できるところ。体験して感動する、それが人々の心の中に残っていくものをつくりたい」という、建築を志したときからの思いを繰り返し口にしながら国内外のプロジェクトを紹介した。
 ベネチアにある15世紀の税関施設を現代美術館に改造した『プンタ・デラ・ドガーナ』では、建物を建設当初の姿に戻した上で、その中心にコンクリートのキューブを挿入。「古いものを徹底して残しながら、新しいものをつくる。現代美術と歴史ある建造物が妥協することなくぶつかる」という、新旧が対話する場をつくりだした。
 パリ中心部にある18世紀に建設された『ブルス・ド・コメルス(証券取引所)』を現代美術館にリノベーションするプロジェクトでは、「人々が経験したことのない空間をつくりたい」として、直径60mある3層のドーム空間の下に「二重らせんの新しい建築をつくり、さらにもう1つコンクリートのハコも入れる」というプランを提示。年内には着工する見通しだという。
 「挑戦していることの勇気だけは伝わってくる、そういう建築」だからこそ、それを体験した人々の心には感動が残る。「いま日本でつくられる建築は美しく合理的で機能的にも優れているが感動は薄いものが多いのではないか。エネルギーや創造力を忘れては、われわれの役割はどこにあるのか」と力説した。
 マーカット氏は、建築家となる上で影響を受けた存在や体験などを紹介しながら、「人生において大事な3つとは、シンプル、シンプル、シンプルだ。シンプルとはただ単純なことではない。ものごとの本質そのものを最小限のもので示していくことだ」とした。また、「手を使って考えることはとても大事だ。若い建築家にはシンキングハンドがなぜ重要かを考えてほしい」と呼び掛けた。
 ダルコ氏は「創刊以来、90年にわたって世界中の建築家の仕事を紹介してきた。その基礎となるのが、建築家や読者に対するリスペクトの気持ちだ」などと話した。

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