【クローズアップ】加速する「空港型地方創生」 空港DX支えるオリエンタルコンサルタンツ | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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【クローズアップ】加速する「空港型地方創生」 空港DX支えるオリエンタルコンサルタンツ

 「空港型地方創生」をコンセプトに、2019年4月からコンセッション(運営権付与)方式による民営化がスタートした和歌山県の南紀白浜空港。その運営会社である南紀白浜エアポート(和歌山県白浜町、岡田信一郎社長)の立ち上げ当初から業務提携契約を結んで地域課題の解決と地域価値の向上に取り組んでいるのがオリエンタルコンサルタンツだ。アセットマネジメントシステムとICTツールの積極活用により、空港インフラ維持管理の効率化・高度化を実現した。さらに空港カーボンニュートラル(CN)化に向けた取り組みや空港公園内でのビジネス拠点整備・運営事業にも着手するなど、空港を核とした地方創生事業を一段と加速している。


ビジネス拠点の完成予想。ビジネス拠点は、熊野本宮大社の屋根を連想させる柔らかな全体フォルムのもとに、オフィス利用と一般利用の大きく2つのエリアで構成。ご当地の紀州材を仕上げ材に活用した木の香が漂うリラックスできる空間を提供する。SDGs(持続可能な開発目標)を念頭に太陽光発電パネルや蓄電池を設置。BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)を導入しZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化にも取り組む。22年6月の開業を目指す



 南紀白浜エアポートの池田直隆オペレーションユニット長は、わが国に97ある空港のうち、上位8空港で約8割の乗降客を受け入れている状況にあると説明する。このため、資金的に余裕のない地方空港では「労働力と技術力の継続的な確保がインフラ維持管理の大きな課題となっている」と指摘。「安全・安心の土台の上に空港業務の生産性を向上させるにはDX(デジタルトランスフォーメーション)しかない」と強調する。

 これまで老朽化が進む空港土木施設の損傷や補修の記録は属人的でアナログによる非効率な作業だった。担当者が数年おきに異動し、技術伝承の観点からも課題があった。このため、オリエンタルコンサルタンツは、アセットマネジメントの国際規格であるISO55001の要求事項に照らしながら問題点や課題を整理し、その解決策の1つとして「SOCOCA(巡回点検支援システム)」を導入した。損傷や補修個所をマップで見える化し、時系列での補修記録による補修頻度の確認や補修工法の検討にも活用できる。導入の結果、これまでに現場作業や事務所に戻ってからの整理作業に要していた時間の約4割削減を実現したという。
 また、ドローンによる進入灯火橋梁の定期点検などICTの積極活用を進めたほか、巡回点検・緊急補修マニュアルの整備や職員直営で対応可能な修繕の実地研修、地震や台風時のタイムライン作成なども実施した。これにより損傷が生じた滑走路の位置、空港内設備の維持管理記録に加え、職員の技術伝承、損傷の起きやすい個所、点検時の留意点などの一元管理にもつながっている。
 今後、これらの成果を踏まえながらSOCOCAを航空灯火施設、航空無線施設、気象観測施設、建築物・車両、バードストライク・野生動物確認、FOD(Foreign Object Debris)にも活用できるよう改修し、日常の補修から大規模な修繕にも活用可能なアセットマネジメントシステムの構築を目指す。

 3月には空港に隣接する展望広場(空港公園)内へのビジネス拠点整備・運営者に淺川組とのタッグで選定され、11月1日に着工した。7月にはJAG国際エナジーを加えた3社で「ゼロ・エミッション空港を目指す包括提携協定」も結んだ。ビジネス拠点施設内に蓄電池を設置し、再生可能エネルギー電力を空港施設に融通することで、平常時での電力消費の効率化と脱炭素化を進めるほか、災害時のレジリエンスを高める。将来的には環境に役立つ仕組みを白浜地域、さらには紀南全体に広げることで余剰電力を地域内で融通し合うマイクログリッドの構築など、地域全体のレジリエンス強化につながる取り組みを目指している。

起工式には(左から)淺川組の池内茂雄社長とオリエンタルコンサルタンツの野崎社長、それに仁坂吉伸和歌山県知事や井澗誠白浜町長、岡田信一郎南紀白浜エアポート社長らが参加した  




 オリエンタルコンサルタンツの野崎秀則社長は「地域に着目し、地域の特性を生かして、地域の活性化に貢献していくことを事業の柱の1つにしている」と話す。その上で、「ビジネス拠点はワーケーション推進の拠点であり、地域とのネットワークによる観光展開の拠点、エネルギーのマイクログリッド構築の拠点として、空港と一体となって地域活性化の核となっていく。この地域へのゲートでありシンボルとして、エリアマネジメントを将来的に展開する1つのモデルとなるように取り組みたい」と意欲を示している。


旅行会社「紀伊トラベル」として地域への受け入れも担う 南紀白浜空港 



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