【記者座談会】国交省直轄業務重点方針/東北新幹線が全線運転再開 | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【記者座談会】国交省直轄業務重点方針/東北新幹線が全線運転再開

A 国土交通省が直轄業務の重点方針を示したが、2022年度のポイントは。

B 履行期限の平準化の目安として、年度内に完了する業務の65%の期限を第3四半期までに設定するようにした。さらに別枠で、翌年度以降への繰り越しは契約件数の25%以上という目標を掲げた。

C 平準化の推進だけでなく条件明示の徹底など、おおむね業界団体との意見交換に沿った内容が反映されている。後は明示した取り組みをいかに実行につなげていくかが肝要だね。

B 重点方針の体裁の面では、今年度から構成を見直した。取り組みの羅列ではなく、公共工事品質確保促進法(品確法)に基づく取り組みの目的を記載することで重点方針の位置付けを明確化した。地方整備局や事務所で発注を担う担当者の理解を促進し、若い職員でも品確法の趣旨に沿って仕事ができるようにした。

C 公共事業の場合、働き方改革を進めるにしても発注者の理解が不可欠となる。問題意識を共有して業務効率化に取り組み、受発注者双方で働き方の改善を実現する必要があるね。

A 地方自治体への展開はどうか。

B 今回の重点方針は直轄発注業務を対象としているが、履行期限の平準化などの取り組みは国交省だけでなく地方ブロック発注者協議会と連携しながら、地域全体で取り組むとした。

D 14日に公表した業務に関する運用指針調査では市区町村の半数がダンピング(過度な安値受注)対策を未実施という結果が明らかになり、国交省は対策状況の見える化に着手する考えを示した。工事と同様にこれからの課題の主眼は自治体での対策強化に移っていくだろう。

1000ヵ所被災も急ピッチに復旧実現

A ところで福島県沖を震源とする3月16日の地震の影響で一部区間で運転を見合わせていた東北新幹線が14日に全線で運転を再開した。

D JR東日本が当初発表した再開見通しを約1週間前倒しした。深澤祐二社長は大きな余震がなかったことも復旧作業が順調に進捗した要因の1つに挙げていたが、やはり工事関係者の昼夜を問わない努力のたまものだろう。

E 今回の地震は場所によって揺れ方が東日本大震災よりも激しかったという話を聞く。土木構造物に大規模な損傷がなかったことは、過去の震災経験を踏まえた累次の対策が奏功したと言える。それでも被災状況を見ると、電柱被害が79本、土木設備被害は約60カ所、軌道変位・損傷は約300カ所あり、被災個所の合計は1000カ所に及ぶ。

F JR東日本に勤務する友人に聞くと電柱の復旧だけでも最大で1日200人の人員を要したという。高架橋本体復旧班や脱線車両復旧班は少なく見積もっても500人は工事に関わり、東京など他地域から応援を集めていたそうだ。地元自治体や警察との土地使用許可の協議を短期間でまとめなければならないことも大変だったと話していた。

E 全線運転再開の直前となる12日に福島~仙台間の在来線快速電車に乗ったが、福島から白石蔵王までの間、橋脚が損傷し補修したとみられる形跡が多数確認できた。脱線現場付近の高架橋上では架線復旧とみられる作業車両と作業員が急ピッチで取り組む様子が見て取れた。

F 大規模な損傷ではないにしろ、これだけ多くの構造物や設備、電柱などが損傷したにもかかわらず、1カ月とかからずに復旧できるというのは本当に驚くべきことだ。早期復旧に向けて作業に当たられた方々の熱意と努力には頭が下がる思いだよ。

全線復旧を目前に控えた12日、東北新幹線福島~仙台間では復旧作業が進められていた

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