【関東地方整備局がCO2吸収コンクリートブロックを現場試行】3段階でCN貢献/大成建設と日建工学が提案 | 建設通信新聞Digital

5月10日 金曜日

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【関東地方整備局がCO2吸収コンクリートブロックを現場試行】3段階でCN貢献/大成建設と日建工学が提案

関東地方整備局は、材料・製造と備蓄、供用の3段階でカーボンニュートラル(CN)に貢献する「CO2吸収コンクリートブロック」を現場試行する。同局荒川下流河川事務所(出口桂輔所長)は5日、大成建設と日建工学が提案した「カーボンリサイクル・コンクリートを用いた根固めブロック」を荒川右岸堤防(東京都北区志茂5丁目地先)で製作する。気中や水中で一定期間の暴露試験を行い、従来技術と比較して効果などをまとめる。

同局が取り組む現場ニーズと技術シーズのマッチングの一環で3月に成立した案件となる。試行するのは、大成建設の環境配慮コンクリート「T-eConcrete」シリーズのうち、2019年に開発を始め、21年2月にリリースした「Carbon-Recycle」と、日建工学が10年に発表した「環境活性コンクリート(EAC)」の2技術となる。

根固めブロックの例

CO2収支マイナスを実現するCarbon-Recycleは、既に現場で実装が進む同シリーズの「セメント・ゼロ型」をベースに、炭酸カルシウムなどカーボンリサイクル製品を加えて製造したコンクリートとなる。

セメント・ゼロ型は高炉スラグを特殊な反応剤を使って固めた製品で、通常のコンクリートと比べて約8割のCO2を削減できる。これに製造段階でCO2を炭酸カルシウムに変換して練り混ぜたのがCarbon-Recycleだ。

Carbon-RecycleのCO2収支(実績値)は、1m3当たりマイナス116-マイナス45㎏となる。CO2をそのまま吸収せず、炭酸カルシウムとして固定するため、コンクリートは強アルカリ性となり、鉄筋の腐食を防いで耐久性を維持する。通常設備での製造と従来どおりの構造物の建設が可能。炭酸カルシウムの安定した調達が実現すれば量産できる技術になる。

ただ、今回の現場試行では、災害対策の備蓄用として鉄筋などを使わない根固めブロックを製作するため中性化を早める配合を行う。このため、備蓄中もCO2を吸収できる機能を持つ。

EACはアミノ酸の一種「アルギニン」をコンクリートに混和した素材となる。供用段階でコンクリートの表面からアミノ酸がゆっくりと溶出し、付着微細藻類や小型藻類の成長促進、良好な生態系のピラミッド形成などに効果がある。磯焼けや藻場の消失などの課題に対応して開発した。今回初めてCO2の吸収・固定の観点から現場試行し、効果を検証する。

現場試行ではCarbon-Recycleを使って3tの根固めブロックを2基製作。このブロックにEACのパネルを各6枚貼付する。水中にもEACのパネルを数枚配置し、暴露試験を行う。

同事務所は21年度からCNへの取り組み実績を評価する工事を発注するなど、SDGs(持続可能な開発目標)を軸とした持続可能な河川管理を展開している。出口所長は今回の現場試行について「こうした技術が今後は標準になるはずだ。新しい分野に積極果敢に挑戦していく」と話す。


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