【クローズアップ】「水冷」でDCを省エネ冷却/NTTコムの「Nexcenter Lab」 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【クローズアップ】「水冷」でDCを省エネ冷却/NTTコムの「Nexcenter Lab」


NTTコミュニケーションズ(NTTコム)は、カーボンニュートラル(CN)の実現に向け、多くの電力を消費するデータセンター(DC)の省エネルギー化に向けた取り組みを加速している。その中核施設「Nexcenter Lab(ネクスセンターラボ)」では、次世代のDC省エネ技術の実証が進む。プラットフォームサービス本部クラウド&ネットワークサービス部の松林修担当部長は、「DCは今後、消費電力や発熱量がさらに増大し空調だけでは冷やしきれない。より高い冷却性能が求められ、液体で冷やす『水冷』がトレンドになる」と強調する。技術の実用化に向けた取り組みや今後の展開を聞いた。



◆「リアドア」と「液浸」実証中/水素エネを活用するDC構築

絶縁性の油が入った液浸冷却装置              絶縁性の油が入った液浸冷却装置



DCはわずか650カ所で、日本の電力の3%前後を使用するデジタルインフラの一つだ。NTTグループは2040年度のCN実現に向け、30年度に18年度比でグループの温室効果ガス(GHG)排出量80%削減に加え、DCのCNも目標に掲げている。

しかし、CNへの道のりは険しい。消費電力・発熱量のさらなる増大が見込まれているからだ。今後、HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)サーバーやGPU(画像処理装置)サーバーの小型化が進み、処理能力の拡大も予測される。このため、1ラックのサーバー収容台数が増え、1ラック当たりの消費電力や発熱量も増えてしまう。

松林担当部長

松林担当部長は「00年にサーバーの消費電力は0.3kWだったが、性能向上に伴い10年には4.3kW、現在では10.2kWのものもある。今後は既存の空調技術だけではDCを冷やしきれない。より熱い物をさらに省電力で冷却することが必要だ。液体を使って冷やす『水冷』がトレンドになる」と予測する。

電気代が高騰する中で、DCなどのIT関連施設の電力消費効率を示す指標の一つ、PUE(電力使用効率)を下げることも重要だと指摘する。

「10メガワットクラスのDCでは、サーバーやIT機器などが満杯の場合、年間の電気代が約13億円と試算される。PUEが2.0だと電気代は26億円かかるが、省エネ化してPUE1.35で構築・運用すれば17億6000万円となる。年間8億4000万円も節約できる。PUEを下げることは電気使用量と電気料金を下げるだけではない。省エネ構造で建設すると、空調容量が少なく設備初期費用も低減できる」とメリットを強調する。



◆リアドア方式は24年度に実用化

サーバーラック背面の扉にファンなどを一体化したリアドア方式

ラボでは、さらなる省エネ化による冷却を実現するため、次世代のDC省エネ技術の実証を進めている。プラットフォームサービス本部クラウド&ネットワークサービス部の内田匡紀ネクスセンターラボ・グローバルアカウントマネージャーは、実証中の「リアドア方式」と「液浸方式」による冷却技術について語る。「従来はサーバールームの外で水を使い、風を冷たく送り出すための熱交換に水を使っていた。実証中の技術は水で直接サーバーを冷やしたり、サーバーを液体に浸したりして水を活用する次世代の冷却設備になっている」という。

内田マネージャー

リアドア方式は、サーバーを収納したラック背面の扉内で冷却水を循環させ、サーバーから出た熱を瞬時に吸収して冷やしている。扉は水冷配管、ファン、外装部分が一体化し厚みが計約40cmであるため、壁吹空調方式の60%程度の面積で設置できる。18年から検証に取り組んでおり、現在は1ラック当たりの発熱量が50kWの高密度大容量であっても冷却できることを確認済みだ。24年度中の実用化を目指している。

ラボで検証中の液浸冷却装置は、絶縁性の油が入ったプールの中にサーバーを直接浸し、油を対流させて熱を奪う仕組みとなっている。油は空気よりも熱伝導率が高いため、効率的に冷却できる。20年5月から検証を進めており、1ラック当たりの発熱量が100kWの大容量冷却の実現に向け、早期の商用化を目指す。



◆「水素を使うDC」24年度目標に実証

松林担当部長は今後の展開として、増大する電力需要をクリーンな水素エネルギーを活用して稼働させる「水素DC」構想を明かす。「現在のDCの脱炭素化は非化石証書での対応が主流となっている。しかし今後、日本に進出してくる外資系企業は非化石証書ではなく、再生可能エネルギーの調達を重要視する。水素を電力供給手段として使うことが新たな潮流となる」と話す。

水素DCは燃料電池または小型水素発電装置(マイクロタービン)を併設し、水素による電力で常時稼働する。今後は数メガワット規模の小ロットの水素DCを構築し、24年度を目標に非常用電源のグリーン化の実証に取り組む。

実証のための水素DCは、大阪・京都・奈良の3府県にまたがる京阪奈などへの構築が想定される。ここに小型水素発電または燃料電池と水素貯蔵装置を併設する。DC内の自社利用サーバーのバックアップ電源の電力供給の実効性や運用性なども検証し、商用化を目指す。


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