【PLSがNTTPCと最適環境構築】地域建設業のBIM導入支援 | 建設通信新聞Digital

5月20日 月曜日

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【PLSがNTTPCと最適環境構築】地域建設業のBIM導入支援

BIMコンサルティング会社のペーパレススタジオジャパン(PLS、東京都港区)が、建設・製造DX(デジタルトランスフォーメーション)のための3次元モデル向けクラウドプラットフォームを提供するNTTPCコミュニケーションズ(NTTPC、港区)と連携し、地域建設会社のBIM導入支援に乗り出した。仕事の進め方から組織の在り方までBIMの導入に合わせて建設会社自体の変革を促すPLSの勝目高行社長は「建設プロジェクト関係者の共同作業環境をしっかりと支えるパートナーが必要だった」と、NTTPCとの関係性を強調する。

NTTPC「VDIクラウドforデジタルツイン」がベースシステム

◆紙の図面使わずVDIで情報共有
大手・準大手ゼネコンへのBIM導入支援で実績を積んできたPLSは、2年前に地域建設会社への導入支援に乗り出した。勝目社長は「建設会社のトップはBIM導入を機に会社自体の変革を推し進めることができる」と考え、所員数100-300人規模の建設会社をターゲットに取り組み始めた。現在は計8社のBIMコンサルティングが進行中という。
先陣を切った岩堀建設工業(埼玉県川越市)は、バイオマス発電所プロジェクトの受注に合わせてBIMの水平展開に乗り出した。PLSが示したロードマップに基づき、現在は導入3年目に入った。1年目は基盤整備、2年目からはプロジェクトにPLSの担当者が支援役として参加していたが、現在は社員だけで完結する実装段階にステージを上げた。
勝目社長は「紙の図面を一切使わず、VDI(仮想デスクトップ基盤)上で情報共有を進めることで、設計や施工、積算の各部門がコンカレント(同時並行)に作業できる。その情報の流れ方に合わせ、組織の在り方自体も変えていかないと、BIMの恩恵を最大限に受けられない」と強調する。岩堀建設工業では情報共有のコントロール役として社内に「VDC(バーチャルデザイン&コンストラクション)センター」を発足し、BIMプロジェクトを一括して管理している。新たなプロジェクトが動き出す際には、所長クラスがセンターを訪れ、VDI環境の中で事前に計画検討を進めている。

現在は8社でBIMコンサルティングが進行中

◆来年度目標は30社以上

BIM/CIM原則化でニーズに高まり

PLSは、埼玉県内で岩堀建設工業に続き、伊田テクノス(東松山市)、中原建設(川口市)、平岩建設(所沢市)のBIMコンサルティングを受託したほか、トーケン(石川県小松市)、ライフデザイン・カバヤ(岡山市)、三陽建設(滋賀県甲賀市)などへのBIM導入支援を進めている。23年度は30社以上との連携を目標にしており、最終的には141社(各都道府県で3社換算)まで拡大する計画だ。国土交通省が23年度から直轄事業でBIM/CIM原則化に乗り出すこともあり、ニーズが一気に高まるとの読みもある。
NTTPCとの連携がスタートしたのは、22年5月からだ。PLSは建設会社のBIM導入環境を構築する上で、情報共有のベースシステムとして10社ほどのVDIツールを比較検証し、コンピューター画像処理装置「GPU」を開発した米国半導体メーカーのNVIDIA社と提携するNTTPCの『VDIクラウド for デジタルツイン』を選定した。
勝目社長は「当社がソフト面、NTTPCがハード面を担い、二人三脚で建設会社により最適なBIM環境を提案していく」と力を込める。NTTPCの岩田貴大AI/IoTビジネスデザイン部部長は「目指すべきBIMのレベルによって建設会社ごとに必要なスペックが異なる。PLSと連携することで、よりユーザーにとって無駄のない最適なパッケージを提案できる」と強調する。

PLSは岩堀建設工業とのコンサルティングを機に全国展開へ

◆事業コンサルの役割へ

左から岩田氏、勝目氏、高島氏

建設産業界でDXへの対応強化を打ち出す企業が多い中、他産業でもDXに向けてデジタル化の要求が高まっている。VDIクラウドforデジタルツインを各分野に事業展開しているNTTPCだが、建設分野に限ってはPLSと連携した事業展開に踏み切る。AI/IoTビジネスデザイン部の高島綜太氏は「建設業は専門性が高く、現場の教育を含めた対応も必要となり、当社だけで対応することは難しかった」と説明する。
PLSのBIMコンサルティングは、導入基盤を整備し、現場の教育も含めて建設会社が円滑にBIMを活用できるような枠組みを構築している。BIMに取り組みたいが、どこから手を付けてよいか悩んでいる地域建設会社は多い。勝目社長は「限られたリソースをどう最大限に活用できるかが重要で、BIMを軸に仕事の流れや組織の在り方そのものを見直す必要がある」と訴える。
BIMを導入した建設プロジェクトでは、関係者が円滑に情報を共有できることが生産性向上の前提となる。建設会社が社を挙げてBIM導入を推進するためには、場所やツールを問わず複数人がコラボレーションできるVDIの環境整備が欠かせない。PLSはNTTPCと連携することで、BIMコンサルの領域からさらに一歩踏み込み、建設会社の事業コンサル的な役割へと進化しようとしている。

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