【名建築を、もっと身近に "建築愛"つまった「弁当箱」】建築弁当設計室 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【名建築を、もっと身近に “建築愛”つまった「弁当箱」】建築弁当設計室

 いい建築は、いい弁当箱だ--。名建築を弁当で再現するプロジェクト「建築弁当」を手掛けるのは、建築学科で学んだ飯田瑛美氏、大石将平氏、関谷拓巳氏と、アートディレクターの坂本俊太氏の広告代理店に在籍する4人組ユニット「建築弁当設計室」だ。「学生時代に建築を学ぶ中で、日本人は日本人が手掛けた名建築を意外に知らない」と感じた。「弁当箱と建築を掛け合わせれば名建築を伝えることができ、新しい体験が生まれるのではないか」と立ち上がった彼らに、建築の楽しさや奥深さ、作品への思いを聞いた。

 コロナ禍で時間に余裕ができたことで、「ご飯と建築というテーマで実験をしていた」と飯田氏は振り返る。もともと料理好きだったこともあり、「建築をご飯で例えたら面白いだろう」と考えていたところ、「お弁当にしたら、建築に詳しくない人でも、建築の難解な面白さをすぐに理解できるのではないか」と思いつき、現在のメンバーと共に制作を重ねていった。アートディレクターの坂本氏は「アートディレクションの視点で言えば、面白く変わった絵になるのは想定できた。だからこそ、あえて真面目にやっているという違和感を出そう。できるだけきちんとアカデミックに見えるようにもっていくことを心掛けた」と当時を振り返る。

 あくまで「模型」に終始せずに、それぞれの建築物の特徴を、詰める具材で表現することにこだわった。
 例えば、妹島和世、西沢立衛両氏による建築グループSANAAが設計した『金沢21世紀美術館』は中華料理を、藤本壮介建築設計事務所の『Tokyo Apartment』は、小さな家型が積み重なった集合住宅だからこそ「もしも小さなお弁当箱を集めて、一つのお弁当を構成したら」という発想で、多様な文化を持つ人たちが隣り合って暮らす東京のように、和、洋、中、イタリアンなど、さまざまなジャンルの具材を入れてみた。

「構造が複雑で、バランスを保つのに苦労したが、つくりながら建築の構造を再発見できて面白かった」と明かす「Tokyo Apartment」


そぼろで鮮やかに彩り、リンゴやサンドイッチ、ペペロンチーノ、中華チャーハンなど、さまざまなバックグラウンドを持つ「世帯」ごとに違った料理を収めた


 食べる体験と建築物を訪ねる体験がリンクするように、「金沢21世紀美術館の屋根に見立てたふたを置くと、天井が抜けているタレルの部屋から、杏仁豆腐のサクランボだけが突き出て見えるようなこだわりも詰め込んだ」(飯田氏)。
 ビジュアルの美しさが目を引き、コンセプトも分かりやすい「建築弁当」は、海外からの注目度も高い。弁当は身近な存在であるため、建築の魅力を訴える有効な手段になっている。

お弁当から「正面」をなくしたデザインに落とし込んだ。円形のお弁当箱はターンテーブルのように回すこともできる

 建築学科で学んだ経験から、「建築というと、どこか閉じている印象があり、自分の家族にも伝わりづらい専門的な部分が多いと感じていた。映画を見たり小説を読むように、気軽に建築を楽しめるきっかけにしたい」との思いが根底にある。

 これまでの3作品は、建築模型に弁当を詰めるというものだったが、「今後は弁当に建築の要素を取り込めばどうなるのか」というアプローチで構想を温めている。3Dプリンターも導入する方針だが、コスト面が課題になる。現状は4人の手弁当で制作しているが、「コラボレーションして一緒に盛り上げてくれる方がいればうれしい」と協力を呼び掛ける。
 「海外の建築で言えばグッゲンハイム美術館で、1本の長いスロープを生かして、流しそうめんをしたい」と語るなどアイデアは尽きない。将来的には「建築家本人が自ら建築の考え方をお弁当箱にするというところまで手掛けたい」とも。例えば、「建築家とつくる曲げわっぱのお弁当なんて、どうでしょうね」と思いを巡らす。

4人組ユニット「建築弁当設計室」





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