【建築家フォーラム】地方再生は「開かれた自分勝手さが大切」 伊藤暁氏が講演 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【建築家フォーラム】地方再生は「開かれた自分勝手さが大切」 伊藤暁氏が講演

 第159回建築家フォーラムが、東京都墨田区の大光電機両国ビルで開かれ、建築家で東洋大准教授の伊藤暁氏が「ヴァナキュラーなもののテクトニクスの現代的再編」と題して講演した。徳島県神山町で手掛けた作品などを紹介し、近代化や経済情勢に翻弄(ほんろう)されながらも地域で連綿と続く人の営みの中で「持続的更新の1つの形として建築がつくられることを考えていきたい」などと持論を展開した=写真。
 伊藤氏は東京を起点に建築活動を続ける傍ら、坂東幸輔、須磨一清の両氏と建築ユニットBUSを組み、神山町で設計活動を展開している。一連の建築群は国内外の注目を集め、昨年のヴェネチアビエンナーレ日本館でも展示された。
 「人口減少など日本全体が同じ問題を抱えているのに、神山町だけ人口減少が止まり、回復するわけがない」ことを前提に神山町の活動をスタートさせたが、地方独特の問題が多くあり過ぎて「何を根拠に建築を造るのか考えさせられた」と活動当初を振り返る。
 宿泊施設の『WEEK神山』は、地元産のヒノキの丸太柱を使った木造ラーメン構造を採用し「環境の中に放り出されたような、環境を体全体で感じることができる建築」を実現した。東京のITベンチャー企業のサテライトとなる「えんがわオフィス」は築80年の古民家再生プロジェクト。古民家に残る「オープンで寛容な架構」に着目し、まったく新しいオフィスに再生。縁側を周囲に巡らせることで、人が自然と集まる開かれた施設にもなっている。
 こうした設計活動を通じて「その場所で手に入る材料、その場所にある技術や産業、その場所が持つ気候風土などが連携して建築が生み出される」ことを実感するとともに、「カスタム化や標準化などに隠されて近代が見過ごしてきたもの」を、逆に使いこなすことで「建築のつくり方の可能性を発見できた」という。
 地方での活動は「地域や社会のためを目的とする地方再生は危険。自分のためにやる、開かれた自分勝手さが大切だ」と指摘する。さらに「地域で連綿と続く人の営みの中で、その1地点として、いま何ができるかを考えることが必要だ」と強調。地方が多くの課題を抱える中で「持続的に更新していく」ことが大切であり、「更新の1つの形として建築がつくられることを今後も考え続ける」と語った。

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