【BIM2023⑪】ビム・アーキテクツ AReXはプラットフォームに進化 | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【BIM2023⑪】ビム・アーキテクツ AReXはプラットフォームに進化

支援業務拡充へ天草にモデリング拠点
 BIM支援ツール『AReX』(AX)を使ったBIMコンサルティングで着実に実績を積み上げているビム・アーキテクツ(東京都世田谷区)の山際東代表は「今後、AXはBIMのプラットフォームとして進化していく」と語る。設計から維持管理までの支援ツールの整備が整った。「これから当社のBIM支援は、新たなフェーズに突入する」と力を込める。

山際氏

 同社はBIMの導入コンサルティングを進める中で、BIMソフト『Revit』に蓄積した情報をより効果的に活用し、作業効率を向上する手段としてAXを開発した。当初はコンサル向けの支援ツールとして活用してきたが、AXを導入した企業が関係会社や協力会社にも広く使ってもらいたいとの要望が高まり、3年前から「AX-Style」としてパッケージ販売をスタートした。

 現在のAXは、ファミリ作成管理・ライブラリ「AX-Family」、基本設計「AX-Planner」、実施設計「AX-DD」、構造設計「AX-ST」、生産設計・施工「AX-CM」、コスト「AX-Cost」、データマネジメント「AX-DM」、維持管理「AX-FM」の8ツールで構成している。山際氏は「ようやく建設ライフサイクルの各フェーズに対応した。活用目的に応じてBIMのデータを、効果的に使ってもらいたい」と強調する。

 例えばAX-Plannerでは2次元プランの情報から3次元モデルを自動作成し、仕上げ表、建具表も簡単に作成できる。AX-DDでは、平面や断面の詳細図作成と検討に加え、仕上げや下地ごとの面積を数量確認しながら設計が進められる。BIMの中にある情報を効果的につなぎ、次の作業に使うためのデータとして構築する。そうした自動化のアプローチがAXの強みだ。「BIMをデータベースとして捉え、次の作業工程で使うためにデータの情報量を上げていく。新たに情報を入力するのではなく、リストから選んで作業を進めることから、経験の少ないオペレーターでも対応できる」点も特筆できる。

建設ライフサイクルの各フェーズに対応するAReX


 AX-Familyでは建具ファミリを自動作成する機能を6月にリリース予定で、設計者や施工者のファミリ作成の悩みを解決する。並行してBIMデータの評価、解析する機能「ヘルスチェック」も拡充する方針だ。既にAX-DMで一部を盛り込んでいるが、今後は法規チェックなども含め、より対象範囲を引き上げる。これにより企画から設計、施工、維持管理を経て「建物の履歴情報なども活用できるようになり、建設ライフライクルをAXでカバーする枠組みが完成する」と強調する。

 同社の売上げ構成は、コンサル業務が6割、AX販売が2割、設計業務が2割となる。将来的には各事業の成長を推し進めながら全体売上げを引き上げるとともに「3事業の売上げ規模が同等になるように比率も変えていきたい」と考えている。特に重要視するのはBIM支援業務への対応だ。これまではコンサル業務を担う中で依頼されるケースがあったものの、対応しきれず最小限にとどめていた。2022年7月に熊本県天草市と立地協定を結び、モデリング業務拠点となるサテライトオフィスを開設し、今後拡大する業務依頼に対応する。

熊本県天草市に置くサテライトオフィス

 天草では地元で建築未経験者の10人を雇用しており、3カ月間かけてRevitの基本操作スキルを身につけた後、AXの活用トレーニングを実施し、半年後には事業に踏み切る計画だ。同社ではコンサル業務が好調に推移する中で企業からのモデリング依頼が急増している。「BIMオペレーターを育て、拡大する業務にしっかりと対応していきたい」と話す。

 建設ライフサイクル全体を支援する枠組みが整ったAXがBIMのプラットフォームとして進化する一方で、モデリング拠点を整備するなど同社自身もまた組織拡充を推し進めながら、大きな進化を遂げようとしている。25年開催の大阪・関西万博ではパビリオンや会場施設のBIMデータ統合管理者として、事業者側の立場でも活動中。このようにBIMの普及に呼応するように近年の同社は、多様な業務と真正面から向き合っている。山際氏は「BIMのコンサルにとどまらず、BIMプロジェクト全体をマネジメントする役割として幅広く活動していきたい」と先を見据えている。



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