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◆映像になる前の絵に焦点/美術監督によるオープニングフォーラムも 谷口吉郎・吉生記念金沢建築館
映像になる前の絵に焦点を当てた『アニメ背景美術に描かれた都市』展が、金沢市の谷口吉郎・吉生記念金沢建築館で始まった。1980年代末から2000年代初頭にかけて制作された代表的なSFアニメーション6作品を対象に、緻密に書き込まれた手書きの背景美術のほか、その創作のために参照された書籍、ロケハン写真、クリエーターへのインタビュー、年表、建築家による未来都市構想などを展示している。異なる作品の背景美術が同時に展示されるのは世界的にも珍しい。監修は建築史家・東北大大学院教授の五十嵐太郎氏。16日に開かれたオープニングフォーラムには、出展作品映画の美術監督が登壇し、アニメや建築のファン60人ほどが詰めかけて活発に質問していた。
この展覧会は、アニメ研究者のシュテファン・リーケレス氏のキュレーションと、メディア芸術領域のアーカイブ研究者である明貫紘子氏の資料調査によって実現した海外での二つの巡回展がベース。日本国内では初となる。金沢建築館としても初の異分野とのコラボレーションだ。
紹介している6作品は『AKIRA』(88年)、『機動警察パトレイバー劇場版』(89年)、『機動警察パトレイバー2 the Movie』(93年)、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(95年)、『メトロポリス』(2001年)、『鉄コン筋クリート』(06年)。
オープニングで水野一郎館長は「異分野とのコラボレーションによる今回の展覧会を通して、(都市は)いろいろなジャンルの人たちがつくり上げていくべきものだと感じている。どんな波及効果を生むか確かめたい」とあいさつした。監修の五十嵐氏は「20世紀の建築の動きとアニメで描かれてきた世界の比較を楽しんでいただきたい。熱気に包まれていた東京から、海外に大きな影響を与える作品が生まれた。手書きからCGに変わっていく直前の時代で、手の力で描かれた都市をぜひ多くの人に体験してもらえたらと思う」と述べた。
リーケレス氏は「長年にわたり熟成してきた共同作業の成果を日本で展示できることをとてもうれしく思う。主催の谷口吉郎・吉生記念金沢建築館がわれわれの大胆な挑戦を実現してくれたことに感謝する。スクリーンでは数秒しか映らない背景美術をじっくり眺めてみてほしい」と話した。
オープニングフォーラムでは『鉄コン筋クリート』美術監督の木村真二氏、『メトロポリス』美術監督の草森秀一氏が、リーケレス氏と明貫氏のコーディネートで対談、制作のプロセスやデジタルの考え方など興味深い話が次々と展開された。巡回展が期待される展覧会だ。
11月19日まで。観覧料一般800円。