【海中生物・構造物の3D形状データ】AIで高解像度取得/富士通 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【海中生物・構造物の3D形状データ】AIで高解像度取得/富士通

開発した技術の概要


 富士通は、AI(人工知能)を活用し、濁りや海流などの影響がある海洋特有の困難な環境でも海中の生物や構造物の高解像度3次元形状データを取得できる技術を開発した。海上・港湾・航空技術研究所海上技術安全研究所とともに、沖縄県石垣島近海で実証実験を行い、サンゴ礁の精密な3次元形状データを取得することに成功し、技術の有効性を確認している。

 今後、測定対象をブルーカーボンの吸収量が多い海藻などに拡大、2026年度中に藻場に関する海洋デジタルツインの確立を目指す。藻場が吸蔵する炭素の見積もりや、藻場の保全・造成、サンゴ礁の生物多様性保全など、カーボンニュートラルに取り組む自治体や企業の施策立案を支援し、サステナビリティトランスフォーメーション(SX)の推進に寄与する。

 開発した技術は、海中の被写体に最適化した深層学習を行った画像鮮明化AI技術と、波や潮流の中でも自律型無人潜水機(AUV)からの安定計測を可能にするリアルタイム計測技術からなる。

 前者は、濁り除去と輪郭の復元を実現する二つのAIからなり、被写体本来の色を復元し、ぼけた輪郭を改善した画像を生成した上で3次元化する。これにより3次元化処理・被写体認識の際のエラーを防止し、物体ごとに形状計測することを可能とした。

 後者は、海中でリアルタイムに3次元計測するため、短周期のレーザー発光と高速走査による高速サンプリング技術を採用。さらに、三つのレーザー波長の中から海況によって計測に適した波長を選択できる水中LiDAR(レーザー式測距装置)を導入した。これにより移動しているAUVから3次元計測ができるだけでなく、物体の動きを追従する技術を開発することで移動する物体の計測も可能になることが期待されている。

 同社は今後、強い潮流や起伏に富んだ海底地形などさまざまな環境でも安定的にデータ取得が可能な技術開発を進める。ブルーカーボンの吸収量の多い海藻から脱炭素への貢献が期待できる洋上風力発電設備の点検に至るまで測定対象を拡大し、ユースケースを蓄積する。また計測した3次元形状データを基に、生物学や環境学などの知見を取り入れたシミュレーションを行う海洋デジタルツインの開発を進めていくとしている。
 

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