【BIM2024⑦】鹿島建物総合管理 BIM-FMで省人化と付加価値 | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【BIM2024⑦】鹿島建物総合管理 BIM-FMで省人化と付加価値

業務受託前から施工現場と協議

左から磯貝氏、田邊氏、平田氏、原田氏

 鹿島建物総合管理が、竣工段階のBIMを建物管理業務に活用する「BIM-FM」の取り組みを着実に増やしている。BIMを軸に建物のライフサイクルを通じて顧客と向き合う鹿島グループの戦略として、設計・施工を手掛ける鹿島と連携し、これまでにBIM-FMシステムの導入は8件の実績を誇る。現在施工中の案件でもシステムの導入が決まり、今秋には10件に拡大する見通しだ。同社建物管理本部技術部の原田昌幸部長は「管理業務の省人化と顧客への付加価値としてBIM-FMを追求している」と説明する。

 グループとして着手したのは2017年にさかのぼる。鹿島が中部地区で自社開発したオフィスプロジェクトと、大阪市内で設計・施工が決まったオービック御堂筋新築工事の2件をトライアルプロジェクトに位置付けた。当時から鹿島建物のBIM-FM担当として最前線に立ってきた技術部の磯貝淑之副部長は「工事の段階から施工現場と連携しながらBIM-FMに必要なデータの検証を進めてきた」と振り返る。

 特にオービック御堂筋では鹿島としてフルBIMにチャレンジする先導プロジェクトでもあり、竣工時のBIMのLOD(モデル詳細度)は高レベルに達した。建物管理業務の開始に合わせてBIM-FMに取り組むためには施工段階からデータの構築を準備する必要がある。BIM-FMシステム導入の8事例目となる今年1月に竣工したアーバンネット御堂筋ビル(大阪市)では竣工2年前に現場とのBIM-FM連携会議を開始したように、管理業務を受託する前から取り組むケースも少なくない。

 同社は、技術部新生産推進室の中にBIMチームを立ち上げ、施工現場との事前打ち合わせを進めている。施工の現場に建物管理で必要なBIMの情報を伝え、データ入力について協力を求めている。同室の田邊萌リーダーは「当初は施工現場との意思疎通に欠け、チーム内で竣工データを修正するケースもあったが、最近では過去の経験を生かした連携フローを確立したことにより、当社が意図したデータの受け渡しが実現している」と説明する。
 BIM-FMの業務ツールには、統合型ワークプレイス管理システム『ARCHIBUS(アーキバス)』を活用している。同システムはRevitとの関連性が深く、鹿島が設計・施工段階の標準ソフトとして位置付けているArchicadのデータをIFC連携でRevitデータに変換した上で、同システムに取り込んでいる。BIMチームの平田亜由美さんは「当初はIFCデータ変換でトライアンドエラーを繰り返してきたが、両ソフトの癖を把握しながら微調整し、現在はデータ連携の精度も向上した」と明かす。

BIM-FM実績は8事例


 施工段階で構築したBIMデータを建物管理側へ情報として引き継ぐことから、これまで業務開始時に手拾いによって入力していたデータ構築の作業が必要なくなるほか、管理の進め方も従来とは大きく様変わりしている。管理担当者は独自開発した携帯情報端末アプリケーション『EQプロジェクション』を使い、ARCHIBUSからの情報をAR(拡張現実)上で確認しながら作業を進めており、より効率的な管理が実現している。

 そもそも同社では建物管理支援システム『CAFM』を運用しており、基幹システム内には約3000棟、約830万件もの情報データベースを構築している。CAFMでは文字情報のデータベースを使った運用となるが、ARCHIBUSではBIMから出力した図面データとひも付いた管理情報を蓄積しているため、様々な情報が図面上にリンクしている。

 磯貝氏は「実はBIM-FMを進める中で、新たなアイデアとしてCAFMの中にある830万件もの情報を有効活用する“簡易BIM”という試みを検討している」と強調する。社を挙げて取り組むDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の一貫として、エリア管理や省人化管理に活用することが狙いだ。

 BIM-FMの事例は、今秋に10件目の管理業務がスタートする。社内では進展するBIM-FMの取り組みに感化され、 常駐管理の責任者自らが担当ビルの簡易BIMモデルを作成する動きも出てきた。 原田氏は「われわれがBIMによって新しい管理のあり方を検討しているように、ビルオーナーがBIM-FMのデータを使って新たなビジネスを展開する可能性も秘めている」と期待を寄せている。

EQプロジェクションを使った管理で効率化



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