2025年に改正されたマンション関係法が4月1日に施行される。マンション管理組合の総会決議における多数決要件の見直しなどに注目が集まっているが、大規模修繕などを含む工事の発注の面でも重要な改正となる。管理組合が理事会を置かずに管理業者が管理者になる「管理業者管理方式」などで工事を発注する際に自社の関係会社に発注するケースなど、利益相反の懸念があるため、区分所有者への事前説明が義務化される。今後は、工事・業務発注の透明化が強く求められる。改正法や施行規則、施行通知から該当部分を読み解く。
利益相反発注での管理者対応
現行の「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(マンション管理適正化法)では、第77条で管理業者が定期的に区分所有者に管理事務の報告をすることが義務付けられているものの、管理業者が関係会社に工事などを発注するといった利益相反の恐れがある行為への対応について規定した条文はない。4月1日施行の改正法では、「第77条の二」が追加された。管理業者管理方式で管理者となった管理業者が、利益相反の恐れがある取引を行う場合、区分所有者に対してそのための説明会を開催して事前に説明することを規定した。
災害時や緊急のために説明会を開けない場合の対応は「ただし書き」で記載し、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則の一部を改正する省令」の第89条の五で、説明会を開催しなくてもよい事態を明示した。さらに、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について」とする業界団体宛ての施行通知では、やむを得ず開催できない場合も「事後的に総会などで報告することが望ましい」とした。
標準契約書の誠実義務に規定
国土交通省は、改正法の施行に向け、管理業者管理方式で管理業者が管理者となる際に管理組合と結ぶ「標準管理者事務委託契約書及びコメント」と、マンション管理会社が管理組合から管理事務を受託する場合の「マンション標準管理委託契約書及びコメント」を25年12月12日に公表した。この中で、管理者もしくは管理事務受託者による利益相反取引については、第26条の「誠実義務等」に記載した。
管理業者管理方式の管理者事務委託契約書では、法律に従って、管理者が利益相反の恐れがある取引をする場合に重要な事実を管理組合に開示することを定めた。利益相反の恐れがある取引の対象については、管理業者の親会社や子会社、関連会社などであることを施行規則の第89条の二で示した。標準管理者事務委託契約書では、この条項で示された対象の企業を列挙することとしている。
併せて、第89条の四では、利益相反の恐れがある場合に開示すべき事項として、管理業者と取引相手との関係、取引内容、金額(内訳と算出根拠)、取引する理由、相手方以外に提出させた見積もりの内容、相手方以外に見積もりさせなかった理由などを示した。
工費の内訳説明や相見積もり必須に
さらに、併記したコメントでは、管理組合に対する透明性確保の観点から、管理組合以外から実際の業務が伴わないような金銭授受をすべきでないこと、利益相反の恐れがある別紙に列挙した業者と取引する場合は、組合員への事前説明と総会の承認のどちらも必要であるとした。
これらは、管理業者と利益相反の恐れがある会社に工事を発注する場合に、相見積もりをするよう求め、工事費用の内訳や積算根拠を組合員に説明することを記載したものだ。例えば、工事業者を公募したものの、参加者がほかにいなかった場合も、その会社に発注する理由となり得る。
管理事務を受託する場合に管理組合と管理会社が結ぶ標準管理委託契約書でも、第26条で誠実義務を規定。管理業者管理方式のような関連会社の列挙などの記載はないものの、併記したコメントでは、透明性を確保するために紹介手数料や仲介料、謝礼など業務が伴わない金銭を管理組合の承認を経ずに授受してはならないことを明記した。工事発注プロセスについても、工事費用の内訳や積算根拠を管理組合に説明し、管理組合の理事会から求めがあった場合は相見積もりを取得することとした。
丁寧な対応を通じた透明性確保が重要
今回の改正法の施行と標準委託契約書などで示しているのは、管理業者管理方式の場合や、管理事務を管理会社が受託した場合、工事受注者の選定を管理業者が実施する場合など、いずれの場合においても、透明性確保を求めている点が肝となる。紹介手数料や仲介料といった金銭を施工者や設計会社などから管理業者が授受しないことはもちろん、複数業者による相見積もり、見積もり内容の説明といった管理組合への丁寧な説明が求められる。













