【記者座談会】企業各社で安全大会 死亡者・死傷者は2年連続で過去最少も労務ひっ迫の注意喚起 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【記者座談会】企業各社で安全大会 死亡者・死傷者は2年連続で過去最少も労務ひっ迫の注意喚起

中央労働基準監督署の安全大会では建設業の墜落災害防止に力を入れることが宣言された


A 毎年7月1日から7日までの全国安全週間はことしで90回目を迎える。スローガンは「組織で進める安全管理 みんなで取り組む安全活動 未来へつなげよう安全文化」。準備期間の6月はゼネコンや設備工事会社など企業各社で安全大会が一斉に開かれているが、そもそも建設業の労働災害の状況はどうか。
B 厚生労働省の2016年(1―12月)労災発生状況確定値によると、建設業で労災による休業4日以上の死傷者数と死亡者数はともに、2年連続で過去最少となった。死亡者数は294人で、1948年に統計を取り始めて以来、初めて300人を下回った。死傷者数は1万5058人と3年連続して減った。
C 建設産業界全体での労災防止対策の成果といえる。ただ、全産業の死亡者数に占める建設業の割合は、31.7%と最も多い。死傷者数でも全産業の12.8%が建設業だ。
D 最重点課題の「墜落・転落」災害は、建設業の死亡災害の45.5%、死傷災害の34.4%を占め、事故別で最多の状況が続いている。15年に労働安全衛生規則を改正し、足場からの墜落防止措置を強化したものの、法令を順守せずに労災が発生するケースがいまだに多いという。
A 労災統計の死亡災害発生状況には含まれない建設業の「一人親方」はどうなっているかな。
C 16年の死亡者数は前年比2人減の46人。うち労働者災害補償保険特別加入者は29人、未加入者が17人だった。事故別では「墜落・転落」が全体の6割程度を占める27人と突出している。
B 労働者扱いとはならない中小事業主や役員、家族従事者も含めた「一人親方など」の死亡者数は75人で、中小事業主が23人、役員が4人、家族従事者は2人だった。
A 企業の安全大会が一斉に行われ、われわれ民間企業担当の記者は分刻みのスケジュールで各社の安全大会を取材している。混み合えば冒頭の主催者あいさつだけを聞いて、次の大会に移動する頭取り取材が中心になってしまう場合もあるが、あいさつの中にもそれなりの傾向は出てくるものだ。
C 東京五輪を目前に控え、首都圏を中心に関連工事が最盛期を迎えることへの注意喚起が目立った。仕事量が一気に増えれば、労働災害を引き起こす可能性は増す。ひとたび大事故が起きれば、他の工事への影響も出てくる。企業としては一大事だから、より注意を促していく。今年度後半から労務がひっ迫するという見方が強いから余計、危機感を強めているのだろう。
B 登壇者の多くは用意した原稿を読むケースが多いが、あるゼネコンの関東地区安全大会では支店長が自分の目の前で起きた仲間の事故を思い出しながら、切々と安全の尊さを訴えていた。「自分たちの仲間から絶対に事故を起こさない思いを胸に取り組んでほしい」と訴えた言葉は重く、印象に残った。
D 設備工事会社の中には支店レベルだが、32年間無事故を続けている企業があって驚いた。その秘訣をトップにそれとなく聞いてみると、「はっきりとしたことは分からないが、協力会社との関係なども良いのだろう」という答えが返ってきた。残念ながら秘訣は明らかにならなかったが、安全文化が脈々と受け継がれていることは間違いないのだろう。
B そういえば、例年よりも大会参加者が増えたという社が数社あった。あるゼネコンの東京土木支店は例年300人規模の参加者が、350人に大幅増員し、会場内も活気があった。設備では1800人もの参加者が集まる社もあった。業績の好調な企業には、協会会社も率先して参加しているのかもしれない。

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