【記者座談会】厳しくなる受注環境/AGCとセントラル硝子が国内建築ガラス事業統合 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【記者座談会】厳しくなる受注環境/AGCとセントラル硝子が国内建築ガラス事業統合

A 最近、受注環境が厳しくなっているという声を聞くが、状況はどうか。
B 確かに中規模の建築工事で、一時よりは競争の相手が増えているという声を聞く。民間の建築工事の発注が、2020年夏季東京五輪を前にいったん落ち着きをみせている模様で、「ここ数年は参加社数が限定されていた規模の民間建築の入札にも、大規模工事に参加していた企業が降りてきて競争社数が増えている」と話す人もいる。
A では、またかつてのような低価格競争が始まるのかな。
B それはないだろう。各社とも、かつてのし烈な価格競争に対する反省は強い。あるゼネコン幹部は「もうあんな競争をしても誰も得しないことを知っている」というほど、過度な価格競争に対するアレルギーは強い。加えて、それほど市場が悪化しているわけでもなく、「2023年度ころにはまた需要のピークがくるだろう」とみる声が多く、それまでのつなぎの物件を受注しに行っているという側面もあるようだ。
C ただ、案件規模が大型化しており、失注すると大きな影響が出るため、厳しい競争になる案件も出てくる。また、競争社数が増えた結果、受注できなかった企業の受注高が上がらず、手持ち工事確保のために無理な受注を始めると、厳しい競争になる物件も出てくるかも知れない。
D 土木についても、19年度下期に大型工事の発注が集中しており、各社が狙っている。高い利益率が想定できる案件などでは、応募が集中する可能性がある。土木・建築とも、一時の環境よりは競争が激しくなっているのは間違いなく、生産性向上などで着実に利益を上げられる体制を整えることがポイントになりそうだ。

国内建築ガラス事業は、市場構造の変化や 品質管理などで厳しさが増している

厳しい品質管理の負担も影響か

A ところで、AGCとセントラル硝子が国内建築用ガラス事業を統合することになったが、背景は。
E セントラル硝子は、子会社トーアミの株式の一部も鋼材商社3社に売却した。以前から網入板ガラス用溶接金網を製造するトーアミに対するセントラル硝子からの製品供給が休止していたようだ。AGCとの建築用ガラス事業の統合については、国内新設住宅着工数の減少と、複層ガラス普及による需要構造の変化、老朽設備の更新を理由としている。こうした動きを総合すると、セントラル硝子が国内建築用ガラスから距離を置こうとしている気がする。
F そういえば、昨年、KYBの制振ダンパーの問題が起きた時に、「なぜセントラル硝子の問題が大きな話題にならないのか不思議だ」という話を聞いたことがある。広島県呉市の公共建築物でセントラル硝子とAGCの強化ガラスが自然破損する事案が起きた。市の調査報告資料によると、セントラル硝子の製品はJIS規格で求められているガラス製造後の再加熱処理「ヒートソーク処理」を行わずに出荷していた可能性が高かったという。AGCの製品については、生産体制・品質管理体制に問題はみられず、JIS規格に準拠した上での自然破損だった。これが今回の事業統合のきっかけとなったかどうかは分からないが、厳しい品質管理もメーカーの負担になっていることは確かだろう。
E いずれにしても今回の事業統合は、新設住宅着工戸数が減少する中で、国内建築用製品メーカーが難しい立場に立たされていることが浮き彫りになった。

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