東畑建築事務所では、設計チームを編成する際、BIMマネージャーやBIMコーディネーターの役割としてD×デザイン室のメンバーがサポートし、設計部門と相談しながらBIM担当を決めている。D×デザイン室長の上羽一輝氏は「実施設計業務への展開を見据える上でも、設計チームの中でBIMコーディネーターを定めて業務を進めていく流れが重要になってくる」と説明する。
品質管理マネジメントシステムの国際規格ISO9001に基づき構築している設計プロセスには、3年前から基本設計着手時にBIM導入の有無を位置付ける項目を追加している。「国のBIM確認申請の動きを見据えながら、実施設計段階のBIMワークフローにも明確に位置付けていく必要がある」と考えている。
国土交通省では建築BIM推進会議の議論を受け、2025年度から建築確認申請でBIM図面審査をスタートすることを決めた。BIMデータを使った自動チェックも検討しており、建築設計事務所にとっては実施設計業務へのBIM対応が必要不可欠になる。国ではBIM導入の底上げを図ろうと、導入プロジェクトを補助対象とするBIM加速化事業もスタートし、BIMの裾野を広げようと動き出している。
BIMを取り巻く状況が急速に変化する中で、同社は情報収集に向けた対外的な活動にも力を注いでいる。D×デザイン室メンバーで構造設計室主管の山本敦氏は建築BIM推進会議の標準化タスクフォースに参加しているほか、オートデスクのBIMソフト『Revit』のユーザー会組織であるRUG(オートデスク・ユーザー・グループ)の構造ワーキングリーダーを務めるなど、BIM関連の対外活動を先頭に立って進めている一人だ。
山本氏が「最新動向を水平展開し、課題抽出を進めている」と明かすように、社内では情報共有の場が機能し、意見交換が活発化している。12年から続いているBIM分科会は、D×デザイン室との密接に連携した意見交換の場だ。ここには20代、30代を中心に約30人が参加しており、月1回のペースで会合を開いている。最新プロジェクトの共有に加え、BIMの環境整備に向けて意見を聞くなど、分科会を通じて業務改善の課題抽出を積極的に進めている。
実施設計段階への本格的なBIM導入を見据え、D×デザイン室では「作図表現」の統一化を準備している。BIMの強みの一つである情報の一元化とその集計機能を最大限に生かせるようにテンプレートやファミリを整備している。実施設計段階への展開を図る上で、その強みを生かせる作図表現を社としてしっかりと規定する必要がある。山本氏は「今までの表現にとらわれず、将来を見据えて形づくろうと広く意見を募っている。BIM確認申請がスタートする前までには一定の成果を示したい」と考えている。
BIM教育も将来を見据えてカリキュラムを整え、新入社員のジョブローテーションの中にD×デザイン室をしっかりと位置付けるなど、BIMを軸にした人材育成が進んでいる。上羽氏は「当社はBIMの裾野を着実に広げてきた。特に20代、30代は日常ツールとしてRevitを率先して使いこなしている。若手がBIMをけん引することが、結果として実施設計への展開につながる原動力になる」と期待している。