【高校生が初受賞】"土木業界を変えたい"未来へ夢 岩見沢農高にi-Con大賞国交大臣賞 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【高校生が初受賞】”土木業界を変えたい”未来へ夢 岩見沢農高にi-Con大賞国交大臣賞

 北海道岩見沢市にある岩見沢農業高校(鎌田一宏校長)の生徒が取り組んだ「高校生が挑戦したICT施工の全面実用化に向けた研究」が、国土交通省の2020年度i-Construction大賞「i-Con推進コンソーシアム会員の取り組み部門」で最高賞の国土交通大臣賞に輝いた。高校生の受賞は初めてという画期的な出来事で、農業土木工学科3年(受賞当時)の高畠優花さんは「研究の成果を生かして就職先でICTについて詳しく学び、土木業界を変えていきたい」と未来に向けた夢を描く。

高畠さん(左)と堀毛教諭


 研究班生徒らは最先端のICT重機を使い、排水性が低い同校の畑2000㎡を地盤改良し、ICT施工と従来施工の人員や時間を比較検証した。検証に合わせ、生徒自らがドローンを飛ばせるように飛行訓練し、飛行許可も取得した。

 労働力不足が心配される空知地域の土木業界の未来のため、ICT施工の全面実用を目的とした研究に取り組み、起工測量から設計、重機施工、出来形計測までのすべての土木プロセスで、ICT施工と従来施工の時間や人員を比較し、ICT施工による生産性向上と安全性を実証した結果、i-Con大賞で見事、国土交通大臣賞の受賞を果たした。

 岩見沢農高は、砂子組と18年5月に協定を締結して連携授業を開始。地域の実態に応じたテーマのもと、課題研究に取り組む「総合学習」の一環として、農業土木科2年(当時)の農業土木開発研究班の生徒9人が授業に向き合った。連携授業の実施について砂子組の真坂紀至執行役員企画営業部長兼ICT施工推進室長は「ICT技術を学びたい生徒の希望と、若手ICT技術者を育成したい当社の考えがマッチし実現した。先端技術を学んで進学、就職に生かしてほしい。レベルの高い人材を育成し地域全体を盛り上げていきたい」と意義を強調し、同年4月からは、空知建設業協会(砂子邦弘会長)を窓口に裾野を広げて取り組みを続けてきた。

 その後、20年3月i-Conコンソーシアムに加盟、9月にi-Conに研究成果を応募し、今回の受賞につながった。

 生徒らは授業で「ICT施工が生産性を向上させる」「熟練者でなくても高度な施工が可能」と仮説をたて、ICT施工と従来手法との作業時間の比較、総合コストの検証などに取り組んだ。出来形評価も3Dで表示しながら、誰でも理解しやすいものとなったことを説明し、「熟練技術者の減少という課題を抱える現場で、ICTは高度な施工ができる可能性がある」と成果を報告した。

 研究活動に協力した空知建設業協会の砂子会長は、「若い時に最先端の技術に触れることは貴重な経験であり、今後に役立ててほしい。協力できたことを光栄に思っている」と話し、生徒たちは、「これから働く上で貴重な経験ができた」「ドローンの飛行訓練は良い経験となった」「経験をこれからの仕事に生かしていきたい」などと力強く語り、進路の選択肢を広げる意味からも研究成果が生徒の未来を切り開いた。

 生徒たちを指導した堀毛憲太郎教諭は、「受賞できたのは、放課後や休日も学校で研究を重ねた結果」と努力をたたえ、研究班長の高畠さんは建設業協会関係者に「たくさんの協力や発表の場を設けてもらえたことに感謝している」との気持ちを伝え、「みんなで頑張ってきた研究が認められたことがうれしい」と喜びを表した。

 このほかにも、同校の取り組みは、最先端のIT技術を競うXtecイノベーションで北海道銀行などから「地域創生特別賞」を受賞しており、地域の未来につながる活動として評価されている。

 北海道開発局で開かれた受賞報告会で倉内公嘉局長は、「ICT施工の効果を実感できる素晴らしい取り組みで、高校生の受賞は全国でも画期的なこと。誇りに思い、ぜひ広く発信してほしい」とこれからの活躍に期待を寄せた。受賞した9人は、幅広い業種の人たちと関わったことを財産にそれぞれの進路に歩みを進める。

連携授業報告会のようす



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