◆EIR試案を活用、手引き作成
建築分野におけるBIM活用の進展を目指し、「建築BIM推進会議」において官民が一体となって幅広い検討が進められています。
官庁営繕部では、それらの検討成果を踏まえ、官庁営繕事業におけるBIMの試行や試行結果を踏まえたガイドラインの作成、改正などBIM活用による生産性向上に向けた取り組みを進めています。
官庁営繕部では、2010年度から新築設計においてBIMの試行に着手し、試行を通じて得られた知見を踏まえ、『官庁営繕事業におけるBIMモデルの作成及び利用に関するガイドライン』(以下『BIMガイドライン』)を14年3月に策定・公表しました。
その後も設計業務や工事においてBIMの試行を継続しており、20年度には、長野第1地方合同庁舎の設計業務において、工事受注者への引き継ぎを視野に入れたBIMデータの作成、BIMデータからの設計図面(一部)の作成などの試行を行いました。
さらに21年度には、PFI事業である名古屋第4地方合同庁舎整備事業において、施工段階に加え、維持管理段階における活用を前提としたBIMデータの作成等の試行に着手しました。
また、これらの試行と並行して、「官庁営繕事業における一貫したBIM活用に関する検討会」(座長・蟹澤宏剛芝浦工業大教授)のご意見をいただきながら、設計・施工分離を前提としたBIM活用のワークフローとBIMに関する発注仕様書となるEIR(発注者情報要件)の試案を作成しました。また、BIMガイドラインにおいてEIRの作成に関する事項を拡充する改定を本年3月に行いました。
今年度は、このワークフローに沿ってEIR試案を活用したBIMの試行を行います。
設計業務では、契約後にBEP(BIM実行計画書)の提出、業務完了時にBIMデータと工事受注者への引継資料の提出を求めることとしています。
設計段階で作成されたBIMデータは、工事発注に当たり競争参加者に提示して完成物のイメージの共有等に役立てることとしています。また、工事契約後に発注者、設計者、施工者等をメンバーとするBIM調整会議を実施して、施工におけるBIMデータの活用について調整を行うこととしています。
これらの手順を踏むことで、設計段階から施工段階へのBIMデータの引き継ぎを円滑に行うための課題が明らかになり、それを解決していくことによってBIM活用が進むものと期待しています。
また、EIR試案を活用した試行結果を踏まえ、早い段階でEIR作成の手引き(仮称)を策定し、地方公共団体等の公共建築発注者にも参照いただけるようにしたいと考えています。このことにより、設計業務委託や工事発注におけるEIRの作成が普及し、公共建築分野におけるBIM活用の進展に寄与できると考えています。
官庁営繕部としましては、業界団体、各省庁、地方公共団体と連携し、引き続きBIMの活用を推進し、事業実施におけるさらなる生産性向上に取り組んでまいります。